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♯02 ホントに日本に農業は必要?と考えるコト

 当たり前と言えば当たり前の話ですが、農業に携わる人は皆、農業を肯定しています。「自然の中で働けるって喜びだよね。」「農業が日本を見えない所で支えているんだよね。」と、多くの農業関係者は言いますし、農業関係者が共有する感情は多くあります。私も同じように、農業は素晴らしいと思っているし、お百姓さんを尊敬してもいるし、日本に農業が必要だと思って憚らない人間です。でも一方で、農業は社会の中の一つの産業分野でしかないという認識ももっています。また、多額の税金によって支えられている産業であることも事実です。ですので、日本農業を決めるのは農業関係者だけではないことも確かです。つまり農業に馴染みのない一般の人達が、農業についてどう思っているかは、かなり重要な問題なのです。

 先日、有名な実業家のホリエモンが「食料はアメリカや中国、ロシアに作ってもらい日本人はそれを輸入すればいい」といったニュアンスのことをテレビで言っていました。そもそも保守的な農村では、ホリエモンのような既存の枠組みに怯えずどんどん新しいことを実現していこうとするスタンスを好まない人も多いのですが、それを抜きにしても、多くの農業関係者は「日本に農業なんて要らない」ことを匂わせるこうした言説に、一考の余地なしに強い反発を覚えます。これは、ある種当然の反応だとも思います。日本は、農耕民族として長いあいだ、農業を生産目的だけではなく、一つの生き方として自分たちの文化に根付かせてきたからです。しかし他方で、本当にホリエモンは間違ったことを言っているのだろうか?という疑問も湧いてきます。農業の方向性を決めるのが農業関係者だけではない以上、感情的にならずに、別の分野で成功している人の意見にも耳を傾け、肯定的な面からも否定的な面からも考えることが重要だと私は思います。

 推測の部分もありますが、ホリエモンの考えはこうです。今はテクノロジーが進んでいるから大規模効率的に作物を生産した方がどう考えてもお得。つまり大きな面積をもっている大国に農業を一任させた方が全体の観点からみてムダが少ない。小さな国で非効率な農業をやりつつ、それを維持するために多額の税金をつぎ込んでいても既得権益層をのさばらせるだけで、何もイノベーションは生まれないしジリ貧。食料の安全保障の問題とかいうけれど、エネルギーを外国に依存している以上それは論点のすり替えで、そもそも現代農業は大量のエネルギーを使うことを前提にしているから、エネルギーが止まれば自動的に食料生産もストップする。エネルギーを依存している以上、食料を依存しても同じこと。よって日本は農業以外の得意分野で稼げばいい。

 私は、このホリエモンの主張と論理は明快で、的確だと思います。論理の前提となっている事柄(依存してるからといって更に依存度を高めても良いのか問題など)については様々な意見があるでしょうが、それらの前提を踏まえれば間違いのない筋の通った主張に見えます。これに対し、番組内では「でも農家の人はこれまでずっと一生懸命がんばって・・・」のような反論がされていましたが、論理に対してそのような感情の反論を投げかけても、それは感情論として片付けられても仕方ありません。経営感覚をもつ人なら、一人一人の懇願を聞いていたら会社が潰れてしまうのでどこかで非情にならなければいけないからです。

 他方で、エネルギー依存もしているし生産効率も良くないけど、日本の農業には違う長所があるのではないか?すべてではなくても、残すべきものがあるのではないか?ということも考えられます。例えば日本酒は、最近では欧米でも人気があり、様々なバリエーションの日本酒が続々登場しています。ワインと同じように、ワイングラスに注いで香りを嗅ぎ、産地や品種、製造方法や自分の好みについてウンチクを語り合う人が世界中で増えることも非現実的な話ではなくなっています。ましてや、日本のおコメ栽培の歴史は3500年前(諸説あり)とも言われており文化的にも深い歴史ももっています。やっぱりワインはフランスのものを、と人が思うように、日本酒は日本のものを呑んでみたいと思わせられれば、産業としてどんどん活性化していくはずです。日本酒に限らず、日本の農業には農業関係者が気付いていない魅力が多く眠っています。それらを整理し、持続可能な形態な所にまでもってゆくことが今後の課題と言えます。

 何が言いたかったのかよく分からなくなってきましたが、つまり「日本に農業は必要ない」という論理的な主張に対しては、感情的に返すのではなく、「こういう農業なら価値があるのでは」という論理的な応答をする必要がある、というのが言いたかったことですね。停滞した経済発展と膨れ上がる社会保障費の問題にこれから直面してゆく日本では、農業のみならず、あらゆる業界でコスト見直しを求められる時代がやってきています。その際に、税金が前よりも少ないぞと騒いでいるのではなく、税金なしでも回していけるぜ俺たちはという意気込みで産業構造を見直し、一般の人にも理解や納得される準備をしておく必要があると思うのです。