そもそも日本が浮いていた
先日書いた「日本農業の石油漬け具合」の話にはまだ続きがあって、そもそも日本の社会システム全体が石油漬けで、むしろ農業生産における石油エネルギー消費の比重は小さいよという話があります。
ここに、1970年時の「日本の総エネルギー使用量に占める食糧システムの比重とその内訳」という円グラフがあります。
ちょっと分かりづらいですが、簡単に言うと
1)食糧という有機エネルギーは、石油という無機エネルギー(97%)と人的労働力(3%)によって算出される
2)食糧の5%を消費するのが農民
3)農民が農業生産を行う(エネルギーの再投資)
4)農民以外の人間も食糧にありつける
=全社会システムが農民の石油の効率的利用によりまわっている!
というような感じです。この本では、「高度な再生産構造」と表現されています。
で、全社会システムが動くには、2840兆kcalが必要で、そのうち農業の割合は4%。
国内総生産に占める農業純生産の割合は4.4%なので、相対的にみると農業はエネルギー効率はいい、というのが結論になっています。
また、グラフをよくみてみると以下のようなことが分かります。
・農業生産に投じられるエネルギーより、家庭や飲食店で調理に費やされるエネルギーの方が倍以上ある。
・カロリーベースでは食糧供給の4%である漁業が農業の1.4倍のエネルギーを消費している。
つまり、農業生産で石油の無駄遣いはあるけれども、相対的にみると他の部門の方が石油漬けの度合いが高い、ということ。
とは言え、日本農業が石油を原料にまわっている、という事実は変わらないので、日本農業がもっている選択肢は、
1)石油確保のルートを死守するか
2)新しいエネルギー源をみつけ農機もそのエネルギーに対応するか
3)人力や馬力に戻るか
の3つなのです。現実的には1)なので、石油確保が第一優先で、その上でどんな農業を展開するのかが、必要なスタンスです。
他産業から石油依存と言われたときは、「お前らもじゃねぇか」と、このエビデンス(とはいえ1970年頃)をもとに反論しましょう。