おコメ博士の闇米日記

オワコンと言われがちな日本のおコメ。令和のこの時代に、グローバル視点で日本でおコメを作る意味を考えます

『米国』アメリカのコメ作り

米国”というだけあって、アメリカもコメを作っている。

日本でのアメリカ農業のイメージは、飛行機による播種や大型コンバインによる収穫といったダイナミックな映像だろうか。私もカリフォルニア稲作はこの目でみたい農業の一つだが、未だ果たせていないのが現状である。

日本農業新聞の企画でこういうのがあるが、55万とかなり高いのだ)

コース紹介:アメリカ農業研修視察団(平成29年第48回日本農業新聞海外農業研修視察団)

 

さて、コメの生産量という点では、アメリカ産コメは世界のコメ生産量の1.8%程度に過ぎないので、世界のコメ需給において大きな影響力があるとは言えない。

しかしアメリカ産コメは世界の取引量の約1割を占めており、商品価値としての側面が強い。また日本にとっては、毎年40万トン近いコメをアメリカから輸入しており、また言うまでもないが政治的パワーバランス上無視できない存在でもある。

だから、アメリカのコメ事情や今後の動向を知ることは日本にとってとても重要だ。

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アメリカのコメの歴史は、300年程度である。

が、商業的稲作に限って言えば、ここ100年程度の歴史に過ぎない。その始まりは、カリフォルニア州のビュッテ郡にある。ビュッテ群。

上の地図で赤枠で囲まれている部分、これがビュッテ郡

当初は研究所での試験研究により稲作が始まり、第一次世界大戦中に栽培面積が急速に拡大している。

稲作の広がりには移住日本人の関わりも強く、当時の稲作普及について当たると、山田や河原といった、日本人に馴染み深い苗字が多数みつけられるのだ。

(移民日本人がどのように資本を獲得し稲作産業に参入していったかのプロセスはこの論文に詳しい)

http://nodaiweb.university.jp/noukei/pdf/NSO113_02.pdf

 

さて、アメリカのコメ作りにおける特徴はまずその規模だが、日米の水田を比較するとその規模の大きさを体感することができる。

日本とアメリカの水田を同じ縮尺で比べた下の写真をみれば一目瞭然だ。

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(引用:八木(2012)カリフォルニアにおける大規模水稲作をとりまく状況と農業経営の対応)

https://www.jkri.or.jp/PDF/2010/sogo_58_yagi.pdf

 

コメ農家の平均経営面積は、日本では約1ha。カリフォルニア州では約160ha。

なんと160倍なのだ。

日本でよくみる水田が160枚あつまったものがアメリカでは1つの田んぼ、と考えるとそのスケールが少しは想像できるかもしれない。とにかくすごいサイズである。

アジア圏におけるコメは、国内自給用の側面が強い歴史をもつことに対し、アメリカにおけるコメは生産量のほぼ半分が輸出用、ということもあり、経営感覚は進んでいる。

その感覚は播種のやり方にもよく表れている。

なんでも、飛行機からの種のばらまきは密度で言えば1平方メートルに540粒の割合と超高密度だが、そのうち発芽するのは20%程度

良い種子を選別することが多い日本では考えられない発芽率だ。アメリカでは良い種子を選ぶ時間とエネルギーがコスト高と考えるのだから、ことごとく対照的な国という印象を受ける。

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全体のコストでみると、アメリカのコストに対し日本は約7倍。

経営面積の比に比べると、差は小さいという印象だが、埋められる差とは言えないだろう。

近年では日本のコメ栽培も低コスト化を進めており結構だが、埋め切れない差があることは前提にすべきである。

将来的な関税撤廃を前提に考えれば、いかにアメリカ的コメと差別化するかが焦点だ。

ちなみに前回紹介したアメリカAmazonで買える高級米が、なぜ日本で流通よりコメより高いのかは分かっていない。一体どんな栽培でそんな値段になるのだろうか。あるいは安く作れているが高くても売れるからその値段なのだろうか。もし後者であれば良いビジネスに見えるが実際はどうなのだろう。