2018年センター試験地理B 農業関連問題への勝手な解説とマメ情報
センター試験を終えた受験生のみなさん、お疲れ様でした。
久々に新聞に載っているセンター試験の問題をざっと見た所、今年の農業関連問題は4つでした。2015年は設問2で「世界の農業」というテーマでしたが、今年は「資源と産業」。農業事情に精通する泥まみれの農業男子女子の皆さんは残念でした。
さて、一応農業を専門にしている者として、農業問題について解説していこうというのが今回の企画。農学部進学を考えている人はチェックしてみてください。
では早速第一問。
世界地図でロシア南西部あたりが黒く塗られており、そのエリアの土壌についての設問ですが、答えは④。
ウクライナから西シベリアまでに広がるFのエリアは土の王様とも言われるチェルノーゼムという肥沃な土壌帯。なんでも肥料を入れずしても驚異的な生産力があるそう。
とにかく土が良い、と言われています。
なぜそんなにも肥沃なのかというと、気候が特徴的だから。
ステップ気候に区分されるこのエリアでは、春先の融雪水と初夏の降雨で草本類が急速に生長、多量の有機物(枯れた植物とか動物遺体とか)が土壌に供給されます。しかし夏季の乾燥と冬季の凍結によって、土壌微生物の活動が一時的に中断されるため、有機物の分解が妨げられ土壌に多量の腐植が集積するのです。
ちなみに、日本の畑作の約50%を占める黒ボク土(火山灰土壌)は、一見みためは黒くて「コレキタ!土の王様キタ!」と思った人もいたそうですが、性質としては酸性でリン酸固定能力が高い(=一般にリン肥料の投入が不可欠)特徴があって、膝をついたという歴史があります。Orz
さて、続いて第二問。
先ほどのチェルノーゼムはステップ気候ですが、実はアフリカのサヘルもステップ気候。かつては「緑の岸辺」と言われる程の植生がありましたが、近年はもっぱら干ばつ等による砂漠化が深刻化。同じステップ気候といっても状況は大きく違います。
土壌の肥沃度がチェルノーゼムとは対照的に低く、ちょっとした気候変動の影響で飢餓などが起こりやすい地域です。
一般には、不適切な管理をする農地(乾燥が進んで塩類集積が進むなど)の増加や、過放牧によって草本を家畜が食べてしまうことによって、砂漠化が起こると言われています。なので、誤っている記述は④。なので答えは④。
ただ、最近は砂漠の緑地化は実は動物がいなくなって物質循環が起きなくなったからでは?と考えた研究者のアラン・セイボリーが家畜を使った緑地化の実証に成功しており、定説が崩れる可能性があります。
こちらのビデオは面白いので一見の価値あり、です。
さて、では次の問題。
これは一番簡単だったのではないでしょうか?
なので解説はほどほどに答えは①。遺伝子組み換え作物の生産で一番有名なのはアメリカのモンサント社です。
企業側の目線だと遺伝子組み換え作物+除草剤などをセットで売って、農作物価格を下げ一度マーケットシェアをとってしまえば、他の競合生産者がつぶれるので、より経営的には盤石になる訳で、そういう戦略をとることが多いです。
アメリカは商業的農業の割合が高いですからね。
ただ最近は大手穀物メジャーの合併が増えていて、業界再編が起きているので、色々とパワーバランス等の状況は刻一刻と変わると思われます。最近の穀物メジャーの動向をかいた過去記事を貼っておきますので、気になる方はどうぞ。
さぁ、それでは最後の問題。
西アジアの問題がでましたね。なかなか難しかったのでは。
A地域はトルコで、意外と知られていませんがトルコは農業国でヘーゼルナッツやサクランボが世界一生産されている、という特徴があったりします。オリーブオイルの生産量も世界第二位。ということでこれは正しい記述。
B地域はサウジアラビア。サウジアラビアのセンターピボットという地下水をくみ上げて作物を作る農業はとても有名です。センターピボットはコレ。(写真はサハラで獲られたものですが)
(引用:
砂漠の真ん中でも無理やり農業をやる訳です。すごいですよね~。
C地域はイラン。サフランやピスタチオが世界で生産量一位ですが、コーヒー生産はきいたことがないですね。あと、乾燥地域なのでため池も適当ではありません。よって記述は間違いなので正解は③。
D地域はアフガニスタン。アフガニスタンのおっさんがヒツジの毛を駆ってる映像なんか見たことある人いるのでは?私は見たことありました。イスラム教的にもヒツジは重要で、羊飼いのおじさんがたくさんいます。なのでこれは正しい記述。
さてさて、全体を総括すると、よく読めば分かる問題もある気がしますが、焦っていると難しく感じるでしょうね。
あとは基本的な知識量がどれだけあるか。地理がまったく好きじゃない人は結構しんどいかもしれません。
あと、私自身がそうでしたが、世界を色々旅してから地理や世界史を勉強した方が断然身になりますね。高校時代だとイメージを掴むことが難しいでしょう。
と、そんなこんなで、センター試験地理の勝手な解説でした。