おコメ博士の闇米日記

オワコンと言われがちな日本のおコメ。令和のこの時代に、グローバル視点で日本でおコメを作る意味を考えます

日本農業の相対評価【2】「エネルギー」

「老後に趣味で家庭菜園」ということであれば、手作業こそが醍醐味というものですが、ある程度の規模になってくるとそうはいきません。ましてや「農業経営」ということになれば、農業機械が不可欠になります。

なので今回は農業エネルギーについて日本を相対評価する回。

農機のEV化は進んでいないので、必然的に石油エネルギーの農業利用を評価することになります。

まず、世界の統計比較から主要なコメ生産国の石油埋蔵量を比較してみましょう。

(引用データ:https://www.bp.com/content/dam/bp/en/corporate/pdf/energy-economics/statistical-review-2017/bp-statistical-review-of-world-energy-2017-full-report.pdf

 

国名     生産量(バレル/日量)

アメリカ      1,235.4万

中国           399.9万 

インド         85.6万   

タイ          47.9万 

オーストラリア     35.9万     

ベトナム        33.3万        

***

日本              1.0万

(※日本の値は資源エネルギー庁 エネルギー白書(2017年版)より算出。2015年の数値*1 )

 

くぅ・・・日本、残念!アメリカの1/1200!

石油をもっていたら日本はどんな国になっていたのだろう、と思うと夢は広がりますが、「たられば」は禁物ですね。

さて、このように、日本は国際的にみて明らかなエネルギー小国です。にも関わらず、日本のエネルギー消費量は世界第五位ですから、必然的にエネルギーは海外輸入頼みになります。この構造は、日本農業に限らず日本という国の構造的問題です。

1.1.1 我が国が抱える構造的課題 │ 資源エネルギー庁

結果的に、日本は中東という母から伸びるへその緒を通じて原油を体内に取り込むことであらゆる産業が動いており、その脆弱性についてエネ庁はこう述べています。

 中東からの供給に依存する原油LNG海上輸送の過程で、ホルムズ海峡やマラッカ海峡など、「海峡」「運河」などの要衝(チョークポイント)を通過せざるを得ず、これらの地域で何らかの緊急事態が発生した際には、我が国のエネルギー供給上の課題が顕在化し得る、いわば脆弱な供給構造となっています。

石油タンカーのイラスト

いやぁ、石油タンカー様様。。。といったところ

 

更に更に、上で示した国々のエネルギー自給率をみてみましょう。

他の国も埋蔵量はあっても、自給率は低いかもしれませんからね・・・

ということで、エネ研の資料*2からドドン。(↗わかりやすくていい資料でした)

 

国名    エネルギー自給率

アメリカ      93%

中国        85%

インド       66%

タイ        58%

オーストラリア  236%

ベトナム     107%

日本        7%

 

オゥ!やはり、日本は突出してエネルギー自給率が低いのです。どこも50%は超えてますからね。そう考えると、よく経済大国になれたものだ、と思いますが。

※これは石油・ガス・石炭など全てを含めたエネルギー自給率なので、石油のエネルギー自給率・農業のエネルギー自給率を意味しませんが、日本が構造的に突出して輸入エネルギーに依存しており、石油資源がごくわずかしか保有していないことは分かるデータです。

 

ではでは、約1万2000km離れた中東から大量に運んできた石油を精製して全国のガソリンスタンドに配った、所まではまぁいいとして(この時点でも地球規模でみたらエネルギー効率としてムダがかなり多いですが)、そこからの石油の使い方、つまりエネルギー効率はどうなのか、について今度は見ていきます。

農学界で著名な西尾道徳先生の分析がとても分かりやすいためご紹介。

No.119 日本農業のエネルギー効率は先進国で最低クラス | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

詳細は記載したURLで見てほしいのですが、重要な記述を抜粋すると以下の点。

加盟国別の1990-92年と2002-04年のエネルギー消費量をみると,直接エネルギー消費量が突出しているのはアメリカの1,538万トン(石油換算量)だが,2位は日本の663万トンであった(図2)。日本の値が高いのは,耕地面積当たりの農業機械の台数が多く,灌漑用水消費量,施設園芸多いことなどに起因すると推察される。

 この図で,加盟国の農業生産額を考慮すると,日本はエネルギー効率の点で極めて劣悪な農業を営んでいることが推察される。

日本の化石燃料消費量に占める農業のシェアは非常に小さいので、農業だけを悪者にされるのも少し違う気はするんですけどね。また、エネルギー効率を悪くしているのは野菜が大部分なので、コメだけに絞ったエネルギー効率はまた別の話ではありますが。

この点については西尾先生の違う記事↘で紹介されています。

No.219 日本農業のエネルギー消費構造 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

さて、西尾先生の分析はOECD内での比較なので、アメリカとオーストラリアしか比較対象がありませんが、石油一トン当たりの農業総生産指数を算出すると、アメリカが11ドルオーストラリアが10ドルに対し、日本は約2.5ドルということになります。このデータからいっても、

日本農業は直接エネルギーをたくさん投入しているのに,農業生産額が非常に少なく,エネルギー効率の悪い農業を行なっている。

ということが言えます。まぁ、農地面積が小さくてチマチマやってるから仕方ないんですけどね。ちなみに、OECD内で日本よりエネルギー効率が悪いのはアイスランドフィンランドの二カ国のみです。

 

と、そんなこんなで、日本農業の相対評価【2】「エネルギー」と銘打った今回の記事ですが、今回も日本の国際比較ではをつけざるを得ません。エネルギー輸入依存率が高く、石油資源も乏しく、かつエネルギー利用効率も少ない、ときたので。

なんだか暗くなってきましたが、次回からはやっと日本農業のポジティブな面に光を当てていきます。その前に、2つのキツい現実をみていこう、という二回でした。

次回からは気を取り直し、日本農業の明るい側面をみていきましょう。

 

P.S.

ちなみにブロク記事の筋とは少し離れますが、中東から日本までの石油タンカーのプロセスをつづったこのリポートは結構おもしろいです。のでペタリ。

www.idemitsu.co.jp