日本農業の相対評価【4ー1】「地理と気候 アメリカ・オーストラリア編」
前回の記事で主要コメ生産国の農業インフラをざっくりと比較してみました。↘
今回は農業インフラとの関係性も強い「地理・気候」の比較。
なぜ農業インフラと地理・気候が関係してるかって?
例えば、砂漠で農業やるのは厳しい訳です。なぜなら水が乏しいから。
だから、地下水をくみあげるセンターピボットというインフラ(↘写真)を整備しなければなりません。一方で、雨がジャンジャン降る東南アジアだと地下水を組み上げる必要がないので、当然センターピボットは用意する必要がありません。
「地理・気候と農業インフラ」関係してますよね?
昨今テクノロジーが進化が著しいとは言われるけれど、農業が自然条件下で営まれる限り、地理や気候の影響はものすごく大きく働き続けるのです。
コメに絞ると、日本の伝統芸ジャポニカ米生産でライバルになるのは、①アメリカ、②オーストラリア、③中国で、近年だと④ベトナムや⑤タイ等です。
全部を一気に比較しちゃうと情報量が多すぎて大変なので、今回の記事では、アメリカとオーストラリアの地理・気候を比較したいと思います。
①アメリカ
アメリカの気候といっても、アメリカの国土は日本の約25倍ですから、アメリカ内に様々な気候区分(ケッペンの気候区分で分けると7種類)があり、主要な農業も地域によって小麦、トウモロコシ、綿花、園芸、畜産といったように異なっています。
アメリカの農業区分で重要なキーワードは西経100度。
ちょうどアメリカのまんなからへんをぶったぎるこの経度で、これより西側が降水量が年500mm以下で乾燥気候。これより東側が年500mm以上で湿潤気候です。(↘のヘタ絵をどうぞ)
ですから、小麦など乾燥に適した作物は西側、トウモロコシや綿花等は東側で栽培される訳です。(このあたりは高校の地理Bで教えられます)
肝心のおコメは、西側海岸・東側中央の両方で作られていますが(黄色の丸のとこ)、コシヒカリなどの短粒種が多く作られているのは西側(カリフォルニア州)です。
西海岸のカリフォルニアは地中海性気候に属し、日本でいう福島や新潟に近い気候と言われていますが、雨が降るのはもっぱら冬で、年降雨量も500mm程と少ないです。
新潟とカリフォルニア州のサクラメントの雨温図を並びてみるとこんな感じ。
温度は新潟の方が寒暖の差が激しく、雨(雪)も年中降るという気候。
一方でカリフォルニアの方は夏は全然雨ふんないんですよね。もっぱら冬。
なので、冬に水資源を貯蓄して夏に利用する、大規模な灌漑設備をもっとる訳です。
ただ、近年は温暖化現象に伴う降雪量の減少によって、水不足が生じることが危惧されていたりします。細かいことは↘の資料が分かりやすいです。
(カリフォルニアにおける大規模水稲作をとりまく状況と農業経営の対応:https://www.jkri.or.jp/PDF/2010/sogo_58_yagi.pdf)
一方、東側にある最もコメの生産量の多いアーカンソー州は温暖湿潤気候に属し年間降水量も1240mm程と多い方ですが、つくられているおコメはもっぱら長粒種です。日本農業とは競合しないので、ここは無視していきましょう。
②オーストラリア
さて、次はオーストラリア。オーストラリアの国土面積も、日本の約20倍ですから、様々な違う気候区分をもっています。こんな感じ↘
オーストラリアもアメリカと同じように年降水量のラインがあって、250mmラインと500mmラインと750mmラインがあります。
外側、つまり海側にいくにつれて雨が増えてく、という感じ。
オーストラリアで有名なエアーズロックは砂漠の中にありますよね?
でも一方でオリンピックが開催されたシドニーは過ごしやすそうな海岸沿いにありますよね?あんなイメージです。
で、肝心のコメは、南東のニューサウスウェールズ州で作られており、年降水量は1240mmと割と多めです。ここです↘
(オーストラリアでの米生産が行われるニューサウズウェルズ 州)
雨温図を新潟と比べるとこんな感じ。
オーストラリアの方が雨が多いようにみえますが、グラフの縦軸の単位が違うのでご注意。
オーストラリアの月降水量は30-60mmですが、新潟は90-220mmといった所。
降雨量が全然ちがいますね。
オーストラリアは南半球なので日本とは季節が逆で、温度ピークが1月で24℃といったところ。日本より1℃程度低いです。ちなみに収穫は五月ごろです。
アメリカやオーストラリアに比べると、日本は降水量はかなり多く、やや気温も高いということが分かります。
また、前回の記事でも書きましたが、
オーストラリアでも地下水位の上昇による塩害の問題もあって、巨大な蒸発池を新たに造成しなければならないなど、ダイナミックな農業形態にはそれなりのデメリットもあるようです。
この点は、日本の地理・気候的特徴も分析したあとに、総合的に比べていこうと思います。
※ちなみに、オーストラリアにおけるコメはSunRice社がかなりのシェアをもっています。5kg1000円以下ですから、すごいですねぇ
(参考文献)
アメリカのコメの生産量(短粒種・中粒種・長粒種)
http://www.usarice-jp.com/market/parts/pdf/date1.pdf
オーストラリアの水田スケールはそこまで大きくないよっていう研究報告
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-22580272/22580272seika.pdf