これからの日本農業とジャポニカ米の行方
ズバリ世界では約5億トンのコメが毎年生産されてますが、そのほとんどが長粒種のインディカ米というヤツです。チャーハンとかピラフに合うパサパサしたヤツです。コレです。
で、一方の我々にとって馴染み深いジャポニカ米の生産量については正確な統計情報がないのですが、主要生産地の日本、アメリカ、中国一部の生産量から推察して米全体の生産量の5~10%程度と思われます。つまり、米っていうとデカいマーケットのように思いますが、ジャポニカ米を食べる人はインディカ米よりかなり少ないので、グローバルサイズのマーケットとしては相対的に小さい訳です。
それでもそれでも、欧米で寿司人気が高まってたり、経済レベルが上がった中国で需要が高まってるので、トレンドとしてはジャポニカ米は上向き↗です。しかも、インディカ米に比べて高値で売れますから、海外でジャポニカ米の生産を画策するところも増えてきているのも自然な流れ、かなと思います。
それで日本農業はどうかという話。
ジャポニカ米というだけあって、日本はジャポニカ米ばかりを生産してる訳ですが、国内だと消費量が年々減少してるので、国外マーケットを狙うしかなくなっています。
国内の消費トレンドとは反対に、外国の消費トレンドは上向きですからね。
といっても、日本農業は元々アメリカのように輸出ガンガンやって儲けようぜ!的な商業的農業ではなくて、自給的農業として小さな農地を丁寧に耕して発展してきたので、いきなり輸出額1兆円めざすぞ!と言われても・・・という空気が田舎には根強く流れています。意識高い系をうとんじる的な空気ですね。
で、もちろん少数ですが先進的な人がいますから、日本政府としては農地をそういった経営的マインドをもったイケイケの人に集約して低コストで高付加価値なコメを生産し海外にバンバン売ってほしい、という所でその理屈も分かるには分かりますが、その目論見に合理性があるかどうかは疑問があります。
つまり大まかに言って以下の二点。
1)日本でコメを栽培する限り特徴的な国土の制約を受けるので、いくら農地集積・ICT利用しても必然的に低コスト化には限界がある。(※コメ農家の平均経営規模:中国10倍、オーストラリア55倍、アメリカ160倍)
2)日本でつけられる高付加価値に独自性があるかどうか。
です。
1)低コスト化問題に関しては明確で誰しもが知るトコロ。政府的にも「今よりマシになるので低コスト」というスタンスです。
問題は2)の高付加価値問題。ここが日本コメ業界の生命線です。
日本国内だと日本産のコメは美味いという神話はあって、外国にいてもそのイメージはありますが、日本人が外国産コシヒカリが結構うまい、という話もよく聞く所。
実際、本場アメリカAmazonのカリフォルニア産スシライスのレビューをみても、かなりの高評価です。↘
過去記事↘
少なくともアメリカの市場をターゲットにしようと思ったら、こういう商品と差別化できてないと厳しい訳です。プラス、コメの味にこだわる人は日本人でも減ってきてますからね、本当に美味しいものを作ったとしても、その味を理解してくれる外国人がどれだけいるかどうかも不透明です。
と、そんなこんなと書いていくと、日本のコメ業界の先は真っ暗じゃんと思いがちですが、そうも思っていません。日本には国際基準でみて恵まれ過ぎているというくらいのメリットがあるからです。
例えば
1)気候が温暖・湿潤で水資源が豊富であること
2)約3000年の稲作の歴史をもつこと
3)寿司や日本酒など世界でも有名なコメの食文化があること
4)職人気質を重視してきた文化があること
5)経済レベルが高く既に一定レベルの豊かな食生活を達成していること
等です。
こんな国はないですからね。
だから、本来は世界のジャポニカ米生産をどうするのかを中心的に考える役割を果たしてもいいトコロですが、現状は世界の厳しいグローバル経済の中でどうやって生き残るのか、みたいな苦しい戦いをしちゃってる所にげんなりしたりします。それって面白くないので、新規参入者はあまりいないと思うからです。
そういうゲームから離脱して、「日本でジャポニカ米を生産するのは世界的にみて重要なことだよ」という状況を作るには、色々と工夫と知恵が必要だと思っています。
で、大きなカギになるのが環境問題という視点ではないか、と。
なぜかというと、世界的に環境問題の深刻さは増してきて、環境への負荷を抑えていこうというのは世界のトレンドです。農業も地球温暖化に及ぼす影響が13%と報告されてもいますから、やり方をシフトチェンジしていこうという流れのさなかです。
なので、日本でコメを生産する理由を作るには、経済部分から少し距離をとって、正しさの度合いを高める配合をした方が独自性が作れると思っています。
アメリカやオーストラリアのコメ所は乾燥地帯で、大規模な灌漑設備でやってますが水不足があったり塩害が出たりと、問題もあるようですからね。
その点、日本は温暖・湿潤で降水量が多いし、気温も高めですから、環境負荷が小さい農業モデルを作りやすい地域ではあるのです。
「損得よりも正しさ」を優先すると、結果お得である、というしたたかなことを考えている今日この頃です。
【参考資料】
「国産長粒米の生産、販売等の動向」
2017 年 3 月 13 日 公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構情報部