こちとら切実。農業のゲン担ぎ
今週のお題「ゲン担ぎ」。
今のシーズンだと、受験関係のゲン担ぎが多いのかもしれません。
だけど、昔から受験程度のささいなイベントに幸運を期待するなんて、よく理解できないなとクールな高校生ながらに思ってたりしました。
だって、受験における合格・不合格なんて、知識量と解法技術と他人の成績くらいの限られたパラメーターで決まっちゃう訳で、どれかが少なければ受からないし、高ければ受かるって当然の話じゃない、って凄くドライに考えてました。
「神社に行ったから受かる程あまくないし、神社に行かなかったから落ちる程きびしくない」
と今でも思ってますよ。
≪農業のゲン担ぎ≫
さてさて、受験のゲン担ぎを理解しない私ですが、縁のあった農業でのゲン担ぎは自然なことだと思ってたりします。
だって、農業ってのはいくら農業の知識や技術が他人より秀でていても、台風がくればリンゴは次々とおちるし、大雨でタマネギは浸水するし、温度が上がらなければコメが実らなかったりする訳ですよ。
これって、他の産業だと中々ないことなのです。自分じゃどうしようも出来ないことに大きく依存してる産業っていうのはね。
今はそれでも保険っていうビジネスモデルがあったり、施設栽培や植物工場っていう天候に左右されないやり方も選択肢に入ってきたので、昔ほどは天候を絶対視してない訳ですが、それでも毎年どこかで天候による被害がある訳です。
当然昔は、そんな選択肢もないので「人事を尽くして天命を待つ」みたいな態度が農業では普通のことでした。
≪雨乞い≫
代表的なのは雨乞いです。
農業に水は必要不可欠なので、水を供給するシステムや効果的に水を利用する技術は超重要なのですが、そもそも雨が全然ふらなくて水がない、ってことは、古今東西農業における大問題です。
なので、昔は世界中で雨乞いが行われており、やはり乾燥しやすい熱帯乾燥地域では盛んでした。
その点、日本は降水量が多い温暖で湿潤な気候帯ですが、それでも山頂で火を焚いたり、みんなで踊ったりと、雨よ降れ降れ、とゲン担ぎをしていた訳です。
熊本県の玉名市では、下の動画のような感じで今も雨乞い奴踊りっていうお祭りがあるようですよ↘
今となってはお祭り的要素が強いので、当時どれくらい切羽詰まって雨乞いしてたのかは、よく分からないのですが・・・。
少なくともこの動画を見る限り、今ではあんま切羽詰まってないですね。笑
≪雷と稲穂の許されざる関係≫
「お天道様が見ているから悪いことはできねぇぜ」っていう感覚が日本では長くあるように、社会と天候の関係はかなり根強くあって、雨乞い以外にも五穀豊穣を祈願するお祭りは全国どこでも見られるものです。
その天候と農業の強い結びつきを示す例として、神社に必ずある「注連縄(しめなわ)」があります。
コレですね。
しめなわって、稲穂で作られてる大きな縄から、ギザギザの紙(紙垂)が垂れてるんですけど、これって何を意味すると思いますか?
実は、田んぼと雷なんです。
しめなわを逆さにすると、稲穂が揺れる田んぼに白い雷が落ちてる、みたいな構図になりますよね?
これは昔、雷が落ちた田んぼでは稲の生育がよくなるってことを発見して、「こりゃ神様からのお恵みだ!」的なことで習わしになったと言われています。
それで、雷は稲を支える妻みたいだからってことで、雷を稲妻っていう訳です。納得でしょ?
ちなみに雷のような放電によって大気中の窒素が土壌に化学的に固定されて、稲に吸収可能な無機態窒素が増えるので、科学的にもこの現象は説明できたりします。
日本は稲作文化が長いので、そんな風に文化との結びつきが深く、物語にいろいろと奥行があるので、知っておくと結構おもしろいですよ。