おコメ博士の闇米日記

オワコンと言われがちな日本のおコメ。令和のこの時代に、グローバル視点で日本でおコメを作る意味を考えます

無肥料で8俵とれる科学的根拠

2016年12月号の現代農業に、「無肥料で8俵とれる科学的根拠」という弘前大学の杉山修一教授の記事が載っていて、Web上でもその記事を読むことが出来ます↘

月刊 現代農業2016年12月号 無肥料で8俵とれる科学的根拠

 

この記事では、無肥料栽培ながら8俵ものコメを収穫している(一般的な肥料を用いる栽培と同程度)篤農家Kさんの水田について着目し、その科学的根拠について説明しています。

 

記事では、以下の二点の疑問を解決する形で無肥料栽培で8俵が達成される根拠が語られています。

(1)Kさんの水田と他の無肥料水田で見られる大きな収量差の原因は何なのだろうか?

(2)毎年収穫を通じて水田からチッソの持ち出しがあるにもかかわらず、なぜKさんの水田はチッソ不足に陥らないのだろうか?

 

この2点の疑問に対しての回答は以下のものです。

 

(1)Kさんの水田では移植後の気温が高く、また土壌中有機物の分解速度が速いために、土壌から豊富なチッソが供給されている。さらに、Kさんの水田では雑草抑制に成功しているため、土壌から供給されたチッソが無駄なく稲に配分され、無肥料栽培で起こりがちな穂数生産力の低迷を回避しているから。

 

(2)Kさんの水田土壌表層ではチッソ固定菌によるチッソ固定能力が高く、無肥料でも自律的に大気中のチッソを取り込む生態系システムが構築されているから。

 

文量制限の都合でかなりかいつまんだ説明になっていますが、この水田を対象としてチッソのプラスマイナスを計算し、結果マイナスになっていないことが実証されています。(つまり、無肥料栽培を続けてもチッソ固定微生物の活性が高いという条件を満たしていれば土壌のチッソは減少しないし、生産性も減少しない)

チッソを投入せず、土壌がチッソの少ない状態だと、自然とチッソを補填しようとするように生態系システムが構築されはじめるって、結構おもしろくないですか?

このプロセスについては全然研究されてないのですが、個人的にとても面白いです。

Kさんの水田のチッソの動きについては色々なデータをとっているので、そのあたりは今後また詳しく説明したいと思っています。