おコメ博士の闇米日記

オワコンと言われがちな日本のおコメ。令和のこの時代に、グローバル視点で日本でおコメを作る意味を考えます

農学博士の僕が自然栽培の課題解決に必要なことをまとめてみます。

前々回の記事で自然栽培のいいトコロを紹介し、

mroneofthem.hatenablog.com

とはいえ色々と自然栽培にも課題があるので、前回の記事では正直に自然栽培の現状と課題を紹介しました。

mroneofthem.hatenablog.com

となると、じゃあどうやってその課題を解決していけばいいの?というのが気になるトコロ。

そこで、自然栽培の考え方に乗っ取って作られる農作物が多くなった方がいいよね、ってことを前提にした上で、では課題を解決してくために何が必要か?を前向きに考えているのが今回の記事です。

曲がりくねった道のイラスト

 

1)10年単位の時間を確保できる生産者を増やす

農業全般に言えることですが、農業技術を高めていくためにはどうしたって時間がかかります。小松菜だったら一カ月で種から収穫までいけますが、小松菜だけで食べていける人はほとんどいません。ましてや米は1年に1回しか経験が出来ないですからね

「農業技術って、身に着けるの超大変だよ・・・」

ということでIT社会の昨今だと、遠隔作業支援専用スマートグラスなんて言うシャレたものを使って、プロの技術を短い時間で習得するって技術が開発されたりしています。

IT土方のイラスト

www.optim.co.jp

とは言っても、農業は毎年の天候が違うし、育てる作物の種類もたくさんある訳で、経験の組み合わせパターンがとても多い訳ですよ。

なので古い考えのようですが、なんだかんだいって基本的な技術と感覚を身に着けたプロになるには長い時間(僕の感覚だと十年以上)が必要だという風に思っています。

 

で、その十年を確保するためには、十年間最低限の暮らしは出来る経済的状況が必要。

最近だと、農家さんの利益をあげる動きとして、農協を中抜きした直販システムや、栽培プロセスを公開するSNSの利用等が一つの可能性を示してはいます。

SNSをやる人のイラスト(男性)

ただ、現状をみるとそういう新しい技術を上手く使える人は一握りといったトコロ。

同じ方向を向いている生産者が共通して使えるプラットホームがあって、大きな失敗をした時は最低限の補償がもらえる、みたいなシステムがあればなぁと思ったりしますが、継続的にお金の流れを作るのはなかなか難しそうでもあります。インチキを防ぐ仕組みも作らなくてはいけないですからね。

まぁ、簡単に言っちゃうと新しい農協や保険のシステムがあれば、というトコロですね。

 

2)農業のための農学を

農学を学んできた身としてはこの点が実に身をつまされるトコロ。

農学は、農業のための学問のはずですが、業界内の実情は研究費を獲得することや学問的に価値がある新知見にエネルギーが注がれることが多く、今となっては生産現場がとても遠い学問になってしまいました。(昔の論文を読むと農家さんと一緒に研究してる学者も少なくなったみたいなんですけどね・・・)

そもそも、新しい発見がありました!論文が掲載されました!と言っても、その内容が一般の人や生産者の人に理解できる用語で語られる場面がほとんどない訳です。

忙しく仕事をしている白衣の女性のイラスト

なので、もう一度、生産者の人のためになる農学を取り戻したいトコロ。

ただそうなると、既存の科学性(同一環境の実験でない、サンプル数が少ない、統計処理が十分でない、科学論文として発表されていないetc)を薄めることになるので、学問界からは「それは科学じゃない」的な批判を受けることにはなるでしょう。

この点よく考えますが、結論としてはいいトコどりが極めて難しい、というのが個人的見解なので、科学性はある程度捨てて、現場性を重視するってことで割り切ってもいいのかな、と最近は考えています。

 

3)異なる国の農業者や違う栽培方法との狭くて深い連携を。

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日本の有機農業の面積割合は0.2%という数字が示しいているように、現時点で日本で栽培方法にこだわりをもつことは、極めてマイノリティになることを意味します。

とは言え、数が少ないことを問題視し、数を増やすことに注力すると、本来重要だったはずの栽培方法の本質やクオリティが薄くなってしまいがち。

まずは似た考えをもつグループ同士で連携し、お互いに切磋琢磨しあう関係性が重要だと思っています。よく、栽培方法のこだわりでバトルがおきちゃいますからね。

戦いのイラスト(棒人間)

なんといっても、今は良くも悪くもグローバルに世界がつながっている時代。

日本の農業者と外国の農業者が容易につながれる初めての時代でもあるのです。

特に協力しやすい間柄だと思っているのは、環境への意識が強く、農業のやり方にもこだわりをもっているヨーロッパ圏。

日本のカルチャーに興味を持っている人もまだまだ多いですし、日本もヨーロッパから仕組みづくり等学べることはたくさんあるはずです。

アジアも肌感覚としては合うと思うんですが、僕の感覚だと、まだ発展途上なケースが多いので、まずは量を優先する時代がアジアでは続くと思うんですよね。

 

と、そんなこんなで、勝手にですが今後の自然栽培のグランドデザインを考えてみました。個人的には2)の農学は何とか出来ないかなぁと思ってるトコロ。

農業において感覚や経験の積み重ねは重要ですが、客観的な情報の積み重ねも大事だと思うからです。