おコメ博士の闇米日記

オワコンと言われがちな日本のおコメ。令和のこの時代に、グローバル視点で日本でおコメを作る意味を考えます

「食は土にあり」の読書感想

日本にしかいたことがないと、日本を客観視することが難しいみたいに、自分がいいと思っている農業(私の場合自然栽培)だけの情報を集めていると、頭が偏りがちになってきちゃいます。勉強は常に大事。

ということで、私も普段関わってる農法とは別の農法についての本を読んでみました。 

食は土にあり―永田農法の原点

食は土にあり―永田農法の原点

 

 永田農法っていうのは、永田照喜治さんっていう1926年生まれの日本人が独自に研究開発してきた農法のこと。

そのきっかけは、やせた岩山で育てたミカンの美味しさにヒントを得たことにあるそうです。

3つのみかんのイラスト

やせた岩山での美味しいミカンの発見というきっかけが永田農法の特徴をよく象徴していますが、永田農法はスパルタ農法とも呼ばれたりする程、水や肥料を絶ち作物を飢餓状態に追い込んで、植物が本来もっている力を引き出そうとすることが基本スタンスです。

ここまでだと肥料を投入しない自然農法や自然栽培とよく似ていますが、特徴的なのは極限状態の作物に薄い液肥を施用すること。

液肥は植物がすぐに養分を吸収できるので使い勝手がいいですし、少量施用であれば過剰な肥料にならないので植物にも環境にも悪影響が少ないからです。柔軟で筋が通った考えですね。

賢いプログラムのキャラクター

 

永田照喜治さんの考え方が誠実だな思う点は、農業はそもそも環境破壊の始まりだということに言及していること。

「そもそも農業の始まり自体が、環境破壊の始まりなのです。
まず人間は様々な自然の植物や動物の中から、人間にとって都合がいいものだけを選択し、作物化あるいは家畜化しました。」

なんか農業というと自然と調和しているイメージで環境に良いものと思われがちですが、自然という言葉を正確に捉えると、人為的に特定の植物や動物を繁栄させる農業は自然ではない訳です。なので、永田さんは農業のスタンスとして、

自然に遠慮しながらする農業

こそが正しい、という風におっしゃっています。

なので、自然に優しい的なイメージをもつ有機農業や自然農法にはかなり懐疑的なものを感じていたようで、

「私は有機農法や自然農法をもてはやす風潮に疑問を感じています。
安全だ、自然に優しいなどを謳い文句にしていますが、果たしてそうでしょうか。他の章でも述べたように農業そのものが環境破壊の始まりです。どんな農業であろうと自然を破壊しないですむ農業はあり得ないのです。」

とおっしゃっています。口調がきついので結構不信感をもってますよね。きっと永田さんは言葉を大事にする人で、耳障りのいい言葉には反発を覚えたんじゃないかなぁと勝手に想像しています。自然農法についても、

自然農法という言葉からは欺瞞を感じます。農業という行為自体が自然ではないのです。そこに人間の手が加わった時点で、自然は自然とはもう呼べないと私は思います。その土地がもともと持っている生産力以上のものを得ようとおもったときにはもう、環境破壊の段階に至っているのです。

と述べてますからね。

頑固おやじのイラスト

さて、そんな風に有機農業や自然農法とは一線を画す永田農法ですが、実は自然栽培と共通する点が多くあることも驚きでした。

1)作物の原産地に合わせた環境を作る 例)トマトの原産地はアンデスの高山地帯なので高温多湿な日本ではハウスで高畝にして水はけを良くする

2)適地適作

など。そもそもストレス状態を高めて植物の本来を引き出すっていう理念イメージは、完全に共通してますからね。農業に精通する人は、場所や栽培方法の違いはあれど、似たような農業感に近づいていくのはとても面白いです。で、最後はその個人の人生観のようなものが反映されて農法のデティールが決まってくるのかな、と。

 

永田農法の場合は、コメの場合除草剤の一回使用を認めていることや、農薬についても、

1)なるべく即効性があって残留性が少ないもの、

2)出荷するときに作物にいっさい残留しないように撒布時期を限ること、

条件に使用を認めていて割と柔軟です。

 

それにしても、山に生えているドングリの樹にヒントを得たり(奇跡のリンゴ)、岩山に生えている美味しいミカンにヒントを得たり(永田農法)と、日本農業にはちょっとしたヒントからスゴイ発見をする人がたくさんいてすごいな、と思う次第。

ちょっと試してみようかな、と思ったりします。

糸井重里さんがやってるほぼ日でも紹介されていて、分かりやすいので興味ある方はぜひ。

だれでもわかる永田農法。 〜永田農法10か条教えます〜