おコメ博士の闇米日記

オワコンと言われがちな日本のおコメ。令和のこの時代に、グローバル視点で日本でおコメを作る意味を考えます

バナナはつらいよ 

 その昔、昭和の時代、お祭りの屋台でバナナの叩き売りを行うテキ屋のおじさんが、日本各地で見られたそう。寅さんばりの見事な口上に膝を叩いて、ついつい高価なバナナを買ってしまう人も少なくなかったとか。そこで売られていたのは主に台湾バナナ。今日本で流通している主なフィリピン産バナナよりも、短くて、ねっとりとした食感だったとか。

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台湾バナナ

 さて、その後、フィリピン産バナナの大躍進により、テキ屋のおじさんや叩き売りと一緒に、台湾バナナも脇に追いやられていくことになります。その黒船的バナナの正体は、フィリピン産バナナのキャベンディッシュバナナ(下写真)。2000年前後の統計では、世界で生産されるバナナの47%を占めるほどにバナナ界の天下に上り詰めます。

「バナナ」の画像検索結果

 

 ところがところが、今度はそのキャベンディッシュバナナが絶滅の危機に、というニュースが2017年12月19日のウォールストリートジャーナルに出ました。盛者必衰ですね。なんでも、パナマと呼ばれる土壌由来の菌によって、既に数千ヘクタールのバナナ農園が壊滅している、とのこと。このまま感染が広がれば、数年で世界中の食卓からバナナが消える恐れ、とも言われています。

jp.wsj.com

 生態系システム上、どんな農作物にも病気はつきものですが、キャベンディッシュバナナでこの病気が甚大な被害を与えている要因には、バナナの増殖様式の特徴にあります。 

 多くの植物が種により増殖するのに対し、バナナは種なし、言わばクローン増殖です。バナナの栽培の歴史を紐解けば、自然界における突然変異で染色体が三倍体になったものが突然現れ、それを抜け目なく見つけた人間が「食べやすくて有用だ!」ということで増やしてきた訳です。東南アジアのバナナプランテーションは、見事なくらいに本当にバナナ一色。

 クローン増殖は、バナナの形や味が均一になりやすいというメリットの反面、同じ遺伝子をもつため特定の病原体に感染しやすいというデメリットがあります。1960年代にも、グロス・ミシェルという人気のバナナがパナマ病によってほぼ全滅してしまったというケースもあり、今回もどこまで被害が拡大するか気になる所。

 こうしたバナナの病害拡大の事例は、単一品種に依存する栽培形態のリスクについて考えさせる現象です。一気に儲けるには単一品種がいいけれども、長期的な視点やリスクヘッジという意味では、地味でいながら多様性というのは大きな価値なのです。

 

【参考URL】

 バナナのプランテーションや病気被害の様子の写真があります↓

www.bbc.com

 

FAOによる最近のバナナ関連の統計情報

http://www.fao.org/economic/est/est-commodities/bananas/en/