おコメ博士の闇米日記

オワコンと言われがちな日本のおコメ。令和のこの時代に、グローバル視点で日本でおコメを作る意味を考えます

気分で書いてみた2022年3月5日の日記

2022年3月5日(土)

2/24のロシア侵攻により開始したロシア・ウクライナ紛争は未だ着地点みえず。ルーブル暴落、石油価格や小麦高騰と全世界的に影響が続きそう。エネルギー海外依存の高い日本も当然影響は不可避だろう。

昨日は地方銀行と農協へ融資相談。経営計画や資金繰り、農学部では決して学ばない観点で頭を使う。その後古民家リノベの定例会出席。新規事業の加工品製造の進捗を聞きながら、古民家への造詣が深いお客さんと話盛り上がる等。夜はこだわり珈琲焙煎の喫茶店マスターのおばちゃんと話しつつ、今年開催予定の草刈選手権の打ち合わせを行う等。中々疲労が続く日々。

この時期は補助事業の報告書関連も佳境、作付け準備も色々進めなくてはいけないし、4月になれば忙しいので加工品製造も3月中に決着をつけておきたく。ハウスの中にヘアリーベッチをまいており、生育が芳しくないので、一度水をまいておきたい。育苗用の土もそろそろ注文が必要。もうだいぶ忙しい。

今年は世界も波乱の様相だが、いい状態で2022年の年越しを迎えたいものだ。

【読書感想】「東大卒農家の右腕になる」を読みました

こんばんは。

とある農業法人で統括マネージャーをしているおコメ博士デス。

弊法人は、設立4年目のまさに“新米”稲作農業法人で、まだまだ業務改善の余地があると日々感じていた所。

そんな折、家業でもない梨園に飛び込んで業務改善を繰り返し、そのノウハウを全世界にぶっ放した佐川マネージャーの存在を知り、これは天啓!と思って新刊「東大卒、農家の右腕になる。」を読みましたので感想を書いてみました。

結論からいうと素晴らしいデス。事業には程遠い体制の生産者の皆さん、ビジョン実現邁進に大忙しで日々の業務がわちゃわちゃのベンチャー企業の皆さん、これから社会に飛び出す大学生の皆さん等々、是非読んでみてくださいネ。

第1部(佐川さんのストーリー)の意味

「ストーリー部と実務ノウハウ部が両面Aシングルになっている」と、まえがきでも紹介があるように、この本は一風変わった2部構成で作られています。

第1部は主人公である佐川さんが順調なエリート街道からいつの間にか農業の道に入っていった経緯、そして偶然インターンで入った梨園で悪戦苦闘しながらも業務改善を繰り返し独自の仕事を見つけていくストーリー部分。

第2部は梨園の経営部分に入り込んで実際に行った業務改善を100にまとめた具体的な部分です。

本のメインパートである「業務改善」を知りたい!と読み始めた鼻息荒い農業関係者であれば、第1部をすっ飛ばして実益が見込める第2部に飛びつきたくなりそうなものですが、それはマグロとシャリを別々に食べるようなもので(この例え、あってる?いや、たぶん間違ってる)、この本の本当の美味しさを見過ごしてしまいそう。

なぜかというと、第1部は「情報の発信者の情報」で、第2部を読み始める読者の信頼感を醸成するからです。

 

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マグロとシャリは一緒に食べて初めて寿司。この本も、第1部と第2部を読んでより良書に。

話は逸れますけど、ふと、科学論文でも似たような構造があるな、と思いました。

ご存じのように、科学論文では「データ」が重要な訳ですが、「そのデータがどのようにとられたか」「どのように分析されたか」も極めて重要です。サンプルが少なすぎるデータは信頼できないし、比較のとりかたがオカシイデータは信頼できないし、統計処理がテキトーなデータは信頼できないからです。

だから科学論文には、①どのように研究が行われたのかという「材料と方法」の部分と、②どのようなデータが得られたのか、という「結果」の部分が必ずあります。

この本でいうと、第1部が「材料と方法」のようなもの、第2部が「結果」のようなものなのかもしれません。第1部を読むことでなぜ佐川さんが見ず知らずの梨園で業務改善をしたようになったのか、感情と理屈の両面から理解でき、「ナルホド!」という納得と安心感をもって第2部を読み始めることが出来ます。論文も、材料と方法がしっかり書かれていると、「おっ、この論文はしっかりしてるゾ」とワクワクと結果を読み進められマス。

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今の時代、情報なんて腐るようにあるから、「誰が」言ってるかってジュウヨーだよね。まったく同じ情報を、現場に入ったことない人が言っても届かないと思うんだよネ

話を戻すと、第1部だけであれば読者は農業関係者をパチーン!とかなり弾いたでしょうし、第2部だけであれば一般の人をパッチーーーン!とかなり弾いたのではないでしょうか。2部構成であることで、多くの人に読まれる普遍的な本に昇華したように思います(実際、Amazonランキング100位内に入ったらしいし。。。すごい!)。

あと、ちょっと個人的なことを付け加えると、ワタクシもあるとき突然、研究者から農業法人の一従業員になって長野県の限界集落に飛び込んだ身なので、佐川さんの激動の人生になにかシンパシーを感じつつ、感情移入をもって第1部を読むことが出来ました。(ラブストーリーは突然に、ではないですが、人生は突然に動き出すもんですよね)

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限界集落に飛び込んだ当初、借りれるマトモな家はなく、隙間風ピューピューの家賃3000円の小屋に段ボールを敷いた寝ていたのも今やネタ。人生、過ぎてしまえばすべてネタ。


刺さったポイント3粒

この本の中で、個人的に面白かった点を3粒紹介します。(粒と書いたのは私がおコメが好きだからで、大意はありません。)

(1粒目)は、うまくいったこともうまくいかなかったことも書かれている点。阿部梨園の新しいシステムがほぼ完成したところで佐川さんが解雇の方向へ向かわざるを得なくなったこと、阿部さんと佐川さんとの間にも色んな感情のやりとりがあったこと、頼りにしていた従業員が退職していったこと等々・・・事業をやっていれば誰しもが経験することだとは思いますが、いいこともわるいことも描写されていたことで、「そうだよね、そうだよね・・・」みたいな感じで、リアリティを感じられました。

(2粒目)は、9つの仕事術。仕事のパフォーマンスを最大化するコツとして、9ポイントがあげられているのですが、それが続々刺さります。考えてる場合じゃないから「マクロ脳を捨てる」とか、第三者の評価軸を気にせずに仕事にうちこむ「プライドを捨てる」とか。これはもう、農業関係なく有効なコツなのではないでしょうか。経営のことを考えてるとなにかと「コスパ」を気にしがちですが、「コスパ思想を捨てる」というのもとても共感したポイントでした。

(3粒目)は、農業経営9箇条。「合理主義」「計画先行」「顧客目線」などは一般的な経営のポイントだと思いますが、例えば「民主主義経営」等は30代の佐川さんならではの視点という気がします(年代差別になっちゃうかな?)。この点を実現するのは決して簡単なことではないと思うのですが、特にこれからの若い世代では公平性やモチベーションを保つために要な視点だという気がします。ちなみに、私も30代なので、難しさを感じつつもその問題意識がとても分かるのでした。

 

ウチも今すぐ30/100カイゼンくらいやれる

 第2部の実務ノウハウ部分では、カイゼンの内容がまず経営、総務、会計、労務、スタッフ、生産、商品、販売、PRに分類され、それぞれのカイゼンの内容・結果・コメント・コツが書かれています。ウチの法人で出来ている所もあり、出来ていない所もあり、「あっ、こういう風にすれば上手くいくかもしれない」というヒントを得られたりします。

 例えばタスク管理は、今ウチはメンバー皆が使えるLINEグループでやりとりすることが多いのですが、メッセージを遡らなければタスクを確認できない等、メッセージアプリならではの弊害もあります。

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せかせかした情報化社会とかが嫌でノウギョーにくる人もいるから、合理化でIT化するのに抵抗ある人もいるけども。でもしゃーない、農業を事業化するとはそういうことだ!

 その点、この本では実行したカイゼンとしてオンラインタスク管理サービスが紹介され、実際に使っていた「Trello」というサービスも紹介されているので、最初のとっかかりがソコに書いている訳です。こういうの、1から探して比較して検討するのって、とってもエネルギー使いますからね。実際に阿部梨園で使われていたサービスだってことで、「最低限は使えるんだな」という信頼感がある訳です。まずはTrelloを使ってみて、自分たちに合うサービスを検討する、ってだけでもだいぶ違います。

 そんなこんなで、100のうち30くらいはすぐに取り掛かれる内容だなと思いました。ホント、こういう本なかったですよね。とても有難くて、佐川さんや編集者さんに新米を送りつけたい気分デス。

 

この本こそが業務改善の賜物

 本の中に、「おせっかいを極める、そのためには想像力です」みたいな内容の文章があるのですが、誰かに文章を読んでもらったり、資料を見てもらう時は想像力がホントに大切だなと思いマス。大学のゼミなどに所属すると、場数を踏んだ上級生ほどどんなプレゼンが効果的になるか、想像力が働いてきて上手になりますよね(もちろーん例外もいますよね)。

 で、この本というのも、ホントに想像力が駆使されている、という気がして。

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想像力は大事ですよね。なにやるにしても。やりすぎると疲れるけど。

 読んでいて苦しくならないような改行とセクション分け、「◎拾った武器」というキャプション、蛍光ラインでの強調、読書の関心をひくたまに入る写真、そして第2部では徹底的にこだわられたビジュアル、タグ、フォーマット・・・

 読者は気楽なもので、どれだけのエネルギーを注いだか分からない本を日曜日の今日1日だけで読了してしまえます。しかし本のポイントポイントを見れば、どれだけ想像力をかきたて、読者を疲れさせないように、飽きさせないように作られているかを感じます。本を作るってのは、すごいことだなーとつくづく思いマス。

 

さいごに

 最後に、佐川さんは当然スゴいなーと思うのですが、阿部さんもスゴい人だなーとつくづく思いマス。なぜかというと、業務改善を世に知らしめるというのは、誰よりも愛着をもった自分の梨園の問題点も開示する、ということですから。問題点を人の目に晒せば、色んなことを言う人もいるでしょうし、開示する、ということはとても勇気がいることだと思いマス。かっこよく見せるより、かっこ悪いところを見せられる人が、かっこいいんデスよねぇ、とポーカーフェイスが得意な僕は思ったりしたのでした。

 

 ということで、とりとめもなくババーッと書きましたが、「東大卒農家の右腕になる」の読書感想でした。(もう1度Amazonリンクを貼っておきましょうか。)

 さて、日曜日ももう終わることだし、佐川さんもまず取り組んだという「ゆるぎない掃除」から、はじめようかなぁ。。。