アマゾンレビューからみる昨今の農業トレンド
生産現場や研究所や行政機関にどっぷりと浸かっていると、一般の人達が農業にどんな可能性を見出してるかが分からなくなってきたりします。自分の身近な人といっても、家族や友人ではかなり限られた世界で一般性がないですからね。
という訳で、アマゾンの高レビュー本の内容から、フツーの人が農業にどんな可能性を見出してるかを見てみようというのが今回の記事。
結論からいうと、売れていて高い評価の本は以下の3つに類型化できると思います。
1)農家や過疎村の成功ストーリー
2)農業+付加価値の話(主にIT技術を駆使することが鍵)
3)どうやって稼ぐかの農業ビジネス論
いずれも新しいモデルや成功物語が人気で、歴史や文化論といったお堅いものは中々伸びないのは仕方ないでしょうね。
では、私が独断で選んだ人気本5冊を紹介します。
(選出基準は独断で以下のように決めました。)
「2018年1月19日にアマゾンの本カテゴリーで「農業」と検索し、レビューの評価順に並べた場合のレビュー数50以上の本から独断で選んだ5作。」
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1.都市と地方をかきまぜる?「食べる通信」の奇跡?
レビュー 93件 平均スター 4.9
レビューが93件もついてるのにスターが4.9の高評価本。
著者は農業や漁業の現場を取材し、その物語を綴った雑誌とともに農作物や魚介類も宅配するという「食べる通信」の編集長。
うーん、この発想はスゴい。物語+食材ってそう言われると「それっていいね」だけど、誰もやっていなかった訳で、発想も具現化能力もすごいですね。
確かに、農家や漁師の人は都市のサラリーマン的生活にまったく染まっておらず自然と対峙しているので、もってる世界観が個性的で面白い。もちろん色んな人がいますが、哲学的にものすごい深い思索をしてきた人がいたりするのです。
「食べる通信」は今は新規入会者をストップしてるようですが、今後も要チェックだと思いました。高レビューも納得といったところ。
2.リンゴが教えてくれたこと
レビュー 103件 平均スター 4.7
農業界のイチローことスーパースターになった木村秋則さん直筆の本。
レビューを見ていると木村さんの人生に感銘を受けた人が多いという印象。
「自然は全部知っている。私は自然が喜んでくれるようそっとお世話をしているだけだ。」
という言葉に木村さんの自然観がよく表れています。
私も読みましたが、ドラマ仕立てで書かれている「奇跡のリンゴ」よりも、直の文章で書かれたこちらの本のほうが言葉に重みがありお勧めです。
人間中心主義に疲れはじめた日本人の心がこの高レビューに表れているのでしょうか?
3.直販・通販で稼ぐ!年商1億円農家
レビュー 68件 平均スター 4.7
小規模メロン農家のビジネス本。
規模拡大せずに、既存の農協を介したシステムに頼らず、直販・通販で稼ぐという今の時代には必須なビジネスモデルを実践している当人が書いた本です。
小規模農家が多くならざるを得ない日本にとっては超重要な視点だと思います。
レビューではビジネスモデルを評価する声もある一方、メロンを収穫した後に畑にいってお礼をいう(礼肥というらしい。初めて知った!)著者の人間性自体も魅力のようで、これまた面白そうな本です。
4.そうだ、葉っぱを売ろう!過疎の町、どん底からの再生
レビュー 52件 平均スター 4.6
徳島県の山間の小さな町、人口1500人程度の上勝町で葉っぱを売るビジネスモデルを契機に町おこしを果たす物語。
もみじや南天、笹などの刺身の妻物を生産しビジネスとして成功した訳ですから、地方の条件うんぬんじゃなくて、アイディアと実行力次第でなんとでもなる、ということのお手本のようなモデルです。
こちらの対談記事からも著者である横石さんの人柄や仕事観が伺えます。
ほぼ日刊イトイ新聞 - 葉っぱをお金に変えた人。 「いろどり」の横石知二さんから、グッドニュース。
5.ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?
レビュー 111件 平均スター 4.5
ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか? (講談社+α新書)
- 作者: 高野誠鮮
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/06/23
- メディア: 新書
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こちらも限界集落である過疎村を救出したプロセスを綴った本。
レビューをみると、スーパー公務員と呼ばれる著者の高野さんを行動力のある理想の公務員としての評価する声が多いように思います。
元テレビマンということもあってか、多彩なアイディアと戦略、そして実行力がずばぬけていて、まったく公務員らしくありません。
地方にはこういう人が眠っている、ということが日本のポテンシャルと思わせる本。
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他にもコチラや、
コチラ
などが面白そうな本ですね。
いずれの本からも感じるのは、地方の疲弊や都市生活の心の空洞が進みつつあるということ。そんな現状を打破するものとして、注目されているといった印象を受けます。
また、農協を筆頭にした中央集権的体制やハコモノ行政の権威が喪失して、それらを前提としない新しいビジネスモデルに脚光があたっています。
ただ、読者の気分としては爽快ですが、こうしたモデルをいかに他の地方でも再現できるかが争点で、今がその途上といったところでしょうね。