おコメの基本的なデータソース
某テレビ番組で安全保障の専門家と言われる人が、大阪にスリ―パーセルと呼ばれるテロリストが潜伏してますよ、と発言したら、その根拠はイギリスの東スポことデイリーメールだったので、それはどうなのよと批判を浴びている昨今の日本社会。
それはさておき、様々な情報が飛び交う現代の高度な情報社会では、なにかを議論をする時の前提として、データおよびそのソースはとても重要になってきています。なので、今回はいい機会なので、日本のおコメに関連する基本データとそのソースを書いてみようかと。
「ソースは2ちゃん」、「ソースは東スポ」では問題ですからね。
1.ジャポニカ米は世界では少数派。
コメというと、世界標準では主に細長くてパサパサするインディカ米を指します。ジャポニカ米の生産は、世界のイネ栽培面積の約 20%、生産量の約 10%、貿易量の約 8%。
【ソース】
国産長粒米の生産、販売等の動向 / 2017 年 3 月 13 日 / 公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構情報部 p4
http://www.komenet.jp/pdf/chousa-rep_H28-2.pdf
※資料内では以下ソースよりデータ引用。
1)「ADVANCE IN TEMPERATE RICE RESEARCH」(IRRI、2012)
2)「Annual Report 2013」(IRRI)
3)USDA ホームページ https://www.ers.usda.gov/topics/crops/rice/background/
2.ジャポニカ米の生産量第1位は中国.
国別のジャポニカ米生産量を同一資料で扱ったものは見つけられていませんが、それぞれの国の統計情報によれば中国、アメリカ、日本、オーストラリアの順です。
2位 米国短・中粒種米全体 2617万トン(2016年)*2
4位 豪州短・中粒種米全体 76万トン(2017年)*4
もちろん他の国でもジャポニカ米を生産してますが、それほど多い量ではないだろうとの推測で省いています。もしかすると見逃してる国があるのかも・・・
オーストラリアのジャポニカ米生産量のデータが見つけられてませんが、オーストラリアのコメ業界を独占しているサンライス社によれば、オーストラリア産コメの約85%がジャポニカ短・中粒種とのことなので、約76万トンくらいということになります。
注意しなければならないのは、中国や日本のように自給的側面が強い場合と、アメリカやオーストラリアのように輸出的側面が強い場合があるなど、国によってジャポニカ米生産の背景が違うこと。なので直近では中国産コシヒカリは中国国内にまわされるだろう見込みですが、アメリカ産コシヒカリは元々商業的なので日本にとっては直近の脅威となる訳ですね。
また、各国トレンドが違っていて、日本産のジャポニカ米生産は需要が減ってるので減少傾向ですが、中国は富裕層の増加に伴って上昇傾向です。
3.日本産米の輸出量50%が香港とシンガポール行き
グローバル経済の下、日本国内のコメ需要が年々減っているので、日本政府としてはコメの輸出を目論んでいるのが近年の動き。農林水産省が公表している「米をめぐる関係資料」p93*5によると、実際、輸出量は年々増加傾向で、2016年の輸出合計は9986トンで2012年の約4倍です。
今のところ、コメ輸出先の約57%が香港とシンガポールです。
欧米で日本食ブームがあるとは言え、今のところはアメリカが8%、イギリスが3%ですから、やはりコメを主食としてきたアジア圏が強いのでしょう。
なので、日本としては香港とシンガポールのお客さんに、他の国のジャポニカ米とは差別化して売り続けることが大事になってきます。値段では叶いませんので、味や品質、安全性が生命線ですね。
てなことで、基本的なコメ関連情報をまとめてみました。今回はコメの国際市場を中心としたデータでしたので、今度は日本国内のコメ関連情報についてもまとめていこうと思います。
*1:第2章 中国におけるジャポニカ米の生産・流通動向http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/k_syokuryo/pdf/h25asia-china2.pdf
*2:USA Rice アメリカ米生産量 https://www.usarice-jp.com/market/parts/pdf/date1.pdf
*3:米をめぐる関係資料 http://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/attach/pdf/kome_siryou-118.pdf
*4:Australian crop report http://data.daff.gov.au/data/warehouse/aucrpd9abcc003/aucrpd9aba_20180213_3W6aU/AustCropRrt20180213_v1.0.0.pdf
*5:米をめぐる関係資料 http://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/attach/pdf/kome_siryou-118.pdf
仮想通貨的農業世界
なにやら中国語みたいなタイトルですが、今回は農業世界のややこしき現実を今流行の仮想通貨になぞらえてパチリ。
仮想通貨に色んな通貨があるように、農業にも色んな農業があります。
私は仮想通貨をよく理解できていないので、詳しい人に「結局どれがいいの?」と聞きたくなる気持ちがよく分かります。
同じように、農業に馴染みがない人は、農業に詳しい人に「結局どれがいいの?」と聞きたがります。
「色々理屈はあるやろうけど、結局イッチャンイエエヤツ、はどれや?」ってヤツですね。
しかし、残念なことに世界が複雑であればある程、これが正解だ、という明確な解はありません。パソコンのような電化製品であればCPUやメモリ等のスペックを項目化して比較も可能でしょうが、農業のような土性や気象や人に大きく左右される状況依存性の強いものは、詳細な比較は不可能です。堆積土壌では上手くいったものが、砂質土壌ではうまくいかないとか、北日本で上手くいったものが、西日本では上手くいかないってのは、農業では頻繁に起こります。「ズバリ正解はコレだ!」みたいなものは、疑ってかかるのがベターでしょう。
それでもそれでも、絶対的な答えがないにしても、相対的な答えはあると思っているのが私の考えの結論。
つまり、資源利用量が多いよりは少ない方へ、生物多様性へのリスクが高いよりは低い方へ、といった風に、方向性では共通認識を得ることは可能だろう、と。
農法対決になると宗教戦争のように苛烈なものになってしまいますが、同じ目標を設定して方法は色々あるよね、という態度の方が平和的です。
永田農法の永田さんがおっしゃってるように、農業はそもそも自然に迷惑をかけているので、「正解はコレだ!」ではなく、遠慮しがちな態度が重要なのではないか、と。
様々な経緯があって、私は「自然栽培」という農業の考え方を推しているのですが、それは私が「自然栽培」の経験があり、理屈や技術というものを他の農法よりもよく知っているからだけであって、すべての農業を体験し比較して得た結論ではありません。
農業の種類は膨大にありますから、すべてを知悉することは不可能です。
よって、農業に対して真摯に向き合おうと思ったら、一生勉強という結論になるのは極めて自然だと思っています。どんな農業をやってる人も、そういう感じはもってるんじゃないでしょうか。
さて、最近のtwitterのタイムラインを眺めていると、価値の上下変動が激しい仮想通貨の話題が熱い訳ですが、投機的目的の人は入ったり出たりしているよう。
一方で、積極的に仮想通貨を推して高騰時も暴落時も決して売らず長期保有を決め込んでいる人は、現在の国家に規制されたお金の概念を覆す、世界共通のプラットフォームとなる仮想通貨的世界を夢見ている感じがあります。
で、ビットコインとか、イーサリアムとか、リップルとか、それぞれが推すコインがある訳ですね。
農業もそれと同じ感じで、環境への影響を出来る限り小さくし、生産者や消費者への健康を損ねず、美味しい農業を目指そう、という同じ目標となる世界観を共有した上で、それぞれが自分に合った農法(つまりコインを)をチョイスすることで十分だと思っています。
やっぱり損得だと不毛な争いが生じて面白くないですからね。それより、新世界を作り上げていこう、という方向の方が明らかに楽しい訳です。