おコメ博士の闇米日記

オワコンと言われがちな日本のおコメ。令和のこの時代に、グローバル視点で日本でおコメを作る意味を考えます

【雑記】New Yorkに行ってきた

羽田からJFK空港(ニューヨーク)へのフライトは長かった。サービスがいい日本航空便とはいえ、185cm・83kgの日本人離れした大きな体躯をもつ僕にとっては、3列シートの中央席は、競走馬が走りだす時に入れられる身動きのとれないゲージのようなものだ。両側の窓からも最も遠いいため、僕は日本国土も太平洋もアメリカ本土の風景も目にせぬまま、約13時間のフライトをヘトヘトになりながらやり過ごしたことになる。(それでも機内でみたQUEENの自伝的映画『ボヘミアンラプソディー』は素晴らしかった。ロックとは何かを教えてくれ、QUEENをもっと好きになれる映画である。)

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ニューヨークの中心駅セントラルパーク。歴史ある建物で存在感がある。

さて、そんな話は雑談だが、昨今は日本政府も農作物輸出に大変積極的である。それは言い換えると、国内で完結するコメの生産と消費のサイクルに見切りをつけたということなのだが、それも当然といえば当然だ。実際、国内のコメ消費量は年々減少し、作ったところでハケる先がない。コメが余るので値段は上がらない。コメ農家の収入はあがらず、時給換算したらコンビニアルバイトの方がよっぽど稼げるので後継者は育たない。先祖伝来の農地は荒れるばかりだ。第一そんな話は今にはじまった話ではなくて、生産量が消費量を上回っちゃった1970年頃の昔から言われてきていることなのである。

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ニューヨークの夜景。まだ見ぬ日本産コメ好きがここには眠っているはずだ。


そんなジリ貧的国内のコメ事情の推移の中で、物流事情が日進月歩で改善し、ネットで瞬間的に発注や決済ができ、モノ・人・金がグローバルに動く今のような時代では、経済活動を国内だけで完結しようという考えそのものがナンセンスになってくるのも自然な成り行きだとは思う。人口がドンドン増加して市場がこれから大きくなってゆくような発展途上国ならまだしも、日本のような人口減が明らかな国では特に、である。だから農作物に関しても、まぁ色々と考慮しなければならないことはあるけれども、輸出にある程度のリソースを割いていこう、というのは合理的な方向性だと思う。ポジティブに考えれば、日本というエリアは1億を下回ってゆく市場だが、世界全体でみれば100億を上回るだろう市場になる、しね。

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日系スーパーは大繁盛。お金さえあれば何でも揃う。不都合は納豆がそんなに美味しくない(冷凍だかららしい)、ってくらい?

前置きが長くなったが、僕がNew Yorkを訪問したのも多かれ少なかれそういう日本コメ事情の流れと関連している。New Yorkは十年前と比べると日本飲食店がどんどん増加していて、レベルも上がっているという。ラーメンや寿司や居酒屋を街中で結構みかけるし、日本酒に興味をもっているアメリカ人も増えているようだ。ニューヨークに酒蔵を作っちゃったアメリカ人もいるようだしね↓

r-tsushin.com

実際、日本産米の評価は高いんだ。アメリカの市場ではカリフォルニア産のコメが主力で、カリフォルニア産コシヒカリが売られているのだが、品質向上の努力が積み重ねられているとはいえ、まだ日本産米との差はあると個人的には感じている。当然カレーとか丼ものにすればコメの存在感が相対的に薄まるので、OKなコメのストライクゾーンは広がるのだが、寿司ロールのような冷めて食べるコメというジャンルでは、まだまだ日本産米との差は大きい、と個人的に思う。ハワイの某コンビニ店で食べた寿司ロール、これとても食べられなかったので。。。

www.mroneofthem.work

実際、日本に帰ってきて「コシヒカリ」や「ゆめぴりか」や「ななつぼし」を食べてるけど、コレが美味しく感じるのよ。

懸念材料としてはまだまだ日本産米の物量が少ないので、例えば精米2年前のコメが普通に店頭で売られていたりと、品質を担保しようとする意識は低めな所だろうか。長期的にみると値段では勝てない日本産米なので、品質にこだわる点は譲ってはいけないだろう。そこは日本産米の生命線で、特に新規のお客さんに低品質のコメを食べさせてしまうとその経験が日本産米のイメージに定着しかねないからね。そういえば中学生の時には先生よく言われたな。「中学校のジャージを着て外で悪いことをしたら、中学校全体の評判が落ちるんだからね!」と。まぁ日本産米もそういう話なのです。

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スーパーに並ぶカリフォルニア産短粒種。コシヒカリとか。コスト意識に厳しい日系飲食店も、安いので結構カリフォルニア産を使っている。

その他もまだ面白い話もある。「コメ」ときくと日本人は値段と味を気にすると思うけど、外国市場だと健康意識が高い人がとっても多いので(日本人が健康を気にしなすぎる、という風に言った方がいいかもしれないが)、そのコメを食べることでどんな健康的メリットがあるか、という見方も結構ある。サラダに大麦や玄米を入れたりするのって、アメリカじゃ普通なんだよね。そういう風に、日本人の脳みそでは想像つかないような価値があるのだから、海外市場というのは面白い。

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大麦サラダ。こんな感じのサラダを朝食にしたりする人、結構いる。味は「美味しい!」ってものじゃないんだけどね。

国内消費も国外消費も、結局はコメを作って食べてもらう、って行為に過ぎないのだが、食味嗜好が違い、感性も違い、重要とする価値観も違って、コメに対してのイメージや要求も違うので、「輸出」はまったく違うゲームだと思った方が頭の整理はつけやすい。日本人的なコメの固定観念をとりはらって、ゼロから「コメとは何か」を考え直す必要があるかもしれない。ということで僕も、そもそもコメってどういうものなのか、を根本的に勉強し直そうかな、と思っているのでした。