おコメ博士の闇米日記

日本農業(特におコメ)について考えるブログです。

アマゾンレビューからみる昨今の農業トレンド

生産現場や研究所や行政機関にどっぷりと浸かっていると、一般の人達が農業にどんな可能性を見出してるかが分からなくなってきたりします。自分の身近な人といっても、家族や友人ではかなり限られた世界で一般性がないですからね。

という訳で、アマゾンの高レビュー本の内容から、フツーの人が農業にどんな可能性を見出してるかを見てみようというのが今回の記事。

 

結論からいうと、売れていて高い評価の本は以下の3つに類型化できると思います。

1)農家や過疎村の成功ストーリー

2)農業+付加価値の話(主にIT技術を駆使することが鍵)

3)どうやって稼ぐかの農業ビジネス論

いずれも新しいモデルや成功物語が人気で、歴史や文化論といったお堅いものは中々伸びないのは仕方ないでしょうね。

では、私が独断で選んだ人気本5冊を紹介します。

 

(選出基準は独断で以下のように決めました。)

「2018年1月19日にアマゾンのカテゴリーで「農業」と検索し、レビューの評価順に並べた場合のレビュー数50以上の本から独断で選んだ5作。」

*****

1.都市と地方をかきまぜる?「食べる通信」の奇跡?

レビュー 93件 平均スター 4.9

都市と地方をかきまぜる?「食べる通信」の奇跡? (光文社新書)
 

レビューが93件もついてるのにスターが4.9の高評価本。

著者は農業や漁業の現場を取材し、その物語を綴った雑誌とともに農作物や魚介類も宅配するという「食べる通信」の編集長。

taberu.me

うーん、この発想はスゴい。物語+食材ってそう言われると「それっていいね」だけど、誰もやっていなかった訳で、発想も具現化能力もすごいですね。

確かに、農家や漁師の人は都市のサラリーマン的生活にまったく染まっておらず自然と対峙しているので、もってる世界観が個性的で面白い。もちろん色んな人がいますが、哲学的にものすごい深い思索をしてきた人がいたりするのです。

「食べる通信」は今は新規入会者をストップしてるようですが、今後も要チェックだと思いました。高レビューも納得といったところ。

 

2.リンゴが教えてくれたこと

レビュー 103件 平均スター 4.7

リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ 46)

リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ 46)

 

農業界のイチローことスーパースターになった木村秋則さん直筆の本。

レビューを見ていると木村さんの人生に感銘を受けた人が多いという印象。

「自然は全部知っている。私は自然が喜んでくれるようそっとお世話をしているだけだ。」

という言葉に木村さんの自然観がよく表れています。

私も読みましたが、ドラマ仕立てで書かれている「奇跡のリンゴ」よりも、直の文章で書かれたこちらの本のほうが言葉に重みがありお勧めです。

人間中心主義に疲れはじめた日本人の心がこの高レビューに表れているのでしょうか?

 

3.直販・通販で稼ぐ!年商1億円農家

レビュー 68件 平均スター 4.7

直販・通販で稼ぐ! 年商1億円農家 (DOBOOKS)

直販・通販で稼ぐ! 年商1億円農家 (DOBOOKS)

 

小規模メロン農家のビジネス本。

規模拡大せずに、既存の農協を介したシステムに頼らず、直販・通販で稼ぐという今の時代には必須なビジネスモデルを実践している当人が書いた本です。

小規模農家が多くならざるを得ない日本にとっては超重要な視点だと思います。

レビューではビジネスモデルを評価する声もある一方、メロンを収穫した後に畑にいってお礼をいう(礼肥というらしい。初めて知った!)著者の人間性自体も魅力のようで、これまた面白そうな本です。

 

4.そうだ、葉っぱを売ろう!過疎の町、どん底からの再生

レビュー 52件 平均スター 4.6

そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生

そうだ、葉っぱを売ろう! 過疎の町、どん底からの再生

 

徳島県の山間の小さな町、人口1500人程度の上勝町で葉っぱを売るビジネスモデルを契機に町おこしを果たす物語。

もみじや南天、笹などの刺身の妻物を生産しビジネスとして成功した訳ですから、地方の条件うんぬんじゃなくて、アイディアと実行力次第でなんとでもなる、ということのお手本のようなモデルです。

こちらの対談記事からも著者である横石さんの人柄や仕事観が伺えます。

ほぼ日刊イトイ新聞 - 葉っぱをお金に変えた人。 「いろどり」の横石知二さんから、グッドニュース。

 

5.ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?

レビュー 111件 平均スター 4.5

こちらも限界集落である過疎村を救出したプロセスを綴った本。

レビューをみると、スーパー公務員と呼ばれる著者の高野さんを行動力のある理想の公務員としての評価する声が多いように思います。

元テレビマンということもあってか、多彩なアイディアと戦略、そして実行力がずばぬけていて、まったく公務員らしくありません。

地方にはこういう人が眠っている、ということが日本のポテンシャルと思わせる本。

*****

 

他にもコチラや、

里山産業論  「食の戦略」が六次産業を超える (角川新書)
 

 コチラ

最強の農起業!

最強の農起業!

 

 などが面白そうな本ですね。

 

いずれの本からも感じるのは、地方の疲弊都市生活の心の空洞が進みつつあるということ。そんな現状を打破するものとして、注目されているといった印象を受けます。

また、農協を筆頭にした中央集権的体制やハコモノ行政の権威が喪失して、それらを前提としない新しいビジネスモデルに脚光があたっています。

ただ、読者の気分としては爽快ですが、こうしたモデルをいかに他の地方でも再現できるかが争点で、今がその途上といったところでしょうね。

安いコメが安く運ばれる時代に日本はどうする?

今年のセンター試験を解いて以来ひさびさに地理Bにハマりだしていますが、高校時代は全然興味もてなかったことが今になって面白く感じられるので新鮮です。

地理が社会構造に大きく関与しているからなるほど感があるんですよね。

 

さて、地理Bの授業で習う項目の一つに交通があります。

世界中のヒトやモノを運ぶ交通には、①自動車②鉄道③船舶④航空機がありますが、それぞれの交通機関には長所と短所があるので、共存できています。

例えば、長距離性に秀でているのが航空機大量性に秀でているのは船舶利便性に秀でているのは自動車、といったように。

このうち、戦後の世界の物流事情を激変させたものに、スローだけど大量性に秀でている船舶があります。

つまり、コイツです。ドドン!

File:Emma Mærsk2.jpg

(15トンの積載量があるデンマークのコンテナ船:エア・マースク)*1

 

今となっては、世界の荷物があつまる港湾にほとんど人がおらず、大型のクレーンが黙々と大型船にコンテナを運び込む風景がごく当たり前ですが、50年程前はそうではなかったのです。

例えば、マーロンブロンドが出演している1951年の映画に、『ON THE WATERFRONT』(日本語タイトル「波止場」)っていう映画があるんですが、映画の舞台であるニューヨークの港にはコンテナの姿はありません。

その代わり、船と陸の間を行き来してひらすら荷物を運ぶ港湾労働者がたくさんいるのです。

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(映画『波止場』のワンシーン。荷役の仕事にありつこうとする日雇い労働者が溢れている。)

 

しかしその後、コンテナという均一で丈夫な鉄の四角い箱が発明されたお陰で、こまごまとした港湾にある人間たちの勢力争いも非効率さも盗難といったアクシデントも(きっと情に満ちた人間関係も)すべて取っ払われ、無機的なシステムが港湾に君臨するようになります。

その結果、コンテナが発明された1950年中頃から1980年中期までにアジア・北アメリカ間の船積商品のコストは半分以下になり、今も輸送コストは低下を続けています。

なんでも、中国で作られた衣類がヨーロッパのお客に届くまでの輸送コストは、シャツ1枚当たり1.2円以下というくらい。

コンテナの発明によって、もともと船舶が持っていた大量性が押し広げられ、さらに世界各国の港湾が大型コンテナ船に整備されたことで、世界の物流事情は輸送コストを考える必要がないほどに激変した訳です。

プロセスの詳細はビルゲイツもお勧めしているこの本で↘

コンテナ物語

コンテナ物語

 

ちなみに今も続々巨大なコンテナ船が製造されていて、2017年時点では中国籍のOOCL HONG KONGが21万トンの積載量をもち、世界最大のようです。

いやはや、中国おそるべし。


Worlds Largest Container Ship OOCL HONG KONG, Maidens At Felixstowe UK-Up Close Drone Footage!

ということで、このブログでは日本農業を相対化するために、

アメリカのコメ作りは低コストだよ、とか

mroneofthem.hatenablog.com

 中国のコメ作りも低コストだよ、

mroneofthem.hatenablog.com

といったことを紹介してきましたが、

1)コメが海外で低コストで作られている

ことに加えて

2)コメの国際的な輸送費も無視できるくらい低コストになった

ので、技術上は高コストなコメ作りをやっている国が、国内の稲作を保護する理由が失われた、と言えます。

もちろん、安全保障上の問題やその国の文化を守るといった側面では保護する理由がある訳ですけどね。だから日本は現時点で778%の高関税をコメにかけています。

ただ、輸送費は船舶の燃料である原油が高騰しない限り上がらないはずなので、日本稲作としては輸送費の低コスト化でなおさらグローバル化の圧力に押され続けることは間違いがないことだと思っています。

実は『コメ大国』中国のコメ作り

かつて瑞穂の国とも言われた日本ですが、世界におけるコメを考えるとき、中国は重要な存在です。

そもそも、稲作の起源については諸説がありますが、現時点の科学エビデンスでは長江流域が稲作起源として有力と考えられています。中国の長江流域にある河姆渡(かぼと)遺跡から約7000年前の炭化米や稲作道具が出土しているからです。

稲の出自が中国にあることに加え、現在ではコメの生産量・消費量も中国が世界第一位です。(ジャポニカ米もインディカ米もあわせたコメの生産量・消費量のことです。)

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(2014-2015年の各国のコメの生産量と消費量 農林水産省/特集1 米(2)より引用)

 

ほとんどの日本人はもちもちしたコメのジャポニカを好んで食べますが、中国人はチャーハン等に適するインディカ米も食べるし、ジャポニカ米も食べます(もちろん地域による違いがありますが)。

2012年の統計では、中国で生産されるコメの内、約1/3がジャポニカで、所得水準の向上やジャポニカ米生産を支援する政府の政策的効果の背景が手伝って、近年その割合が高まってきています。

2014年の中国のコメ生産量が約1億4000万トンですから、その1/3がジャポニカ米(約4600万トン)と仮定すると、日本で生産されるジャポニカ米の約6倍が既に中国で生産されていることになります。

いやぁ、すごいスケールですね。

 

となると気になるのは、米価と日本への輸入のリアリティですよね。

米価については、90円/kg程度

といっても、近年中国の米生産コストが高まり、また人民元高が影響したこともあって、ジャポニカ米輸出価格が上昇している中でのこの値段。うーむ。お安い。

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国際市場でみると、中国産ジャポニカ米の値段があがった結果、国際的にはアメリカ産ジャポニカ米の方が安くなり、下で示した表のように、中国産ジャポニカ米の価格競争力は近年下がっています。

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*1

 

ですがもちろん、日本産ジャポニカ米と比較すればその差は歴然

日本産米が2000円/5kgとしたら、中国産米はだいたい500円/5kgといったところ。

1/4の価格帯です。

中国大連市のスーパーマーケットでその実情を確認した森嶋賢博士も、その安価には驚いています。↘

www.jacom.or.jp

それと、東日本大震災のあとコメ不足になったので、西友が一時期中国産米を販売していたこともあるんですよね。このときは1299円/5kgの値段と、割と高かった訳ですが。

www.nikkei.com

味もブログを見る限り悪くなかったみたいです↘

d.hatena.ne.jp

という訳で、中国産ジャポニカ米が日本にじゃんじゃん輸入されるようになったら日本国内農家がピンチになることは間違いがないです。歓迎論もかなりありますからね。

なんといっても、既に日本国内のジャポニカ米消費量の6倍が生産されている訳ですから、日本市場に参入する準備は整っているといってもいい訳です。

ただ、タイミングとしてはここ数年はない見込みです。

というのも、今はまだ中国国内のジャポニカ米の需給が逼迫してるので、輸出する余力がないのです。日本農業にはまだ時間が残されていることを我々は幸運に思うべきではないでしょうか。

その間に、どんなコメ作りなら日本でやる価値があるのか?問題を解決しておきたい所です。この問題は、国際的な比較や日本農業の現状を分析した上で答えを見つけることが、多くの人を納得させる上で重要だと思っています。

 

 

 

ビットコインの次はレタス・大根・白菜の時代

仮想通貨の価格が急落してネット界隈が騒がしい今日この頃ですが、野菜価格の高騰でバタバタしている農業界からレポートです。

www.sankei.com

なにせレタスは平年の3.4倍大根は2.7倍白菜は213円で1.5倍ですからね。

ビットコイン価格が-25%とかいってますけど、こちとらそれどころじゃない訳ですよ。

時代はビットコインイーサリアムリップル、なんかじゃありません。

時代はレタス白菜大根です。

白菜のイラスト(野菜)

そもそもなんでこんなに値上がりしてるのかというと、昨年秋に温度が低かったことや雨が続いたことがあって、特に葉物の成長が遅れたからです。

白菜目線でいうと、「まだ子供なのに毎日さむいし雨は降るわでテンションダダ下がりっすわー」というやつです。

例えば白菜は、8月末~9月頭に種をまいたやつが、だいたい4カ月くらいかかってすくすく成長して、今の1月頃に収穫できるのですが、温度や太陽の光の程度によって生育期間が縮まったり伸びたりする訳です。

つまり、まだ白菜が子供の段階で光合成を必要としてる時に、天候不順で伸び悩んだので、結果今の時期でもまだ小ぶりで、小さなものを無理矢理出荷してるうちに需給バランスが崩れているという訳なのです。

高い値札を見た人のイラスト

基本、この高騰はずっと続く訳ではなくて、冬に播いた野菜が続々と出荷される2月頃には値段も落ち着くはずです。

創業60年の八百屋の社長が、「こんなに高値が続く冬は初めて」と驚いていますが、気象条件って予想外のことがあるよね、っていう当たり前を前提にすると、特段びっくりすることでもないのです。(業界人にとっては経営への影響大きいので頭を抱える気持ちはわかりますが・・・)

今回のケースは、台風などで野菜が売り物にならなくなっちゃったケースではないので、売る時期を気にしなければ、もっと待って大きくしてから、食べれば問題ない問題で、社会システム全体としてはムダが多いと思ってます。

ただ、野菜業界としては鍋の需要が高まる今時期を無視する訳にはいかなくて、生産と消費のパワーバランスが消費に傾き過ぎると、長期的には社会全体にとって利益が減っちゃうと思っっちゃいますね。

うなだれるお百姓さんのイラスト

こんな社会全体のムダに対しては、以下の3通りの対応があると思います。

1)高騰する時もあるし暴落する時もあるし、そういうものだとギブアップする

2)植物工場の技術開発を進めて気象条件に左右されない安定生産を目指す

3)輸入ルートを多数確保してAが駄目な時はB、という風に保険をかける

 

1)が現状なんですが、だったら驚くことは本来ないんですよね。天候不順は必ずある訳で、野菜の価格が上下することも当然なので。

2)も一時期注目を集めましたが、今時点の技術だと特に太陽光のかわりに人工光を使うコストがとても高いので、普段の野菜価格を下げることが難しいです。ただ、施設のコストが劇的に下げる発明がされれば、安定生産が可能なので見込みはあります。

3)は中国産の白菜やキャベツを輸入するってのは実際今回も方法としてとられてますが、天候不順というアンラッキータイムはどこで発生するか分からないロシアンルーレットなので、そのために流通経路を確保し続けるコストをどう考えるかです。

 

また、1)のギブアップにも種類があって、①とつぜん値段が高くなることにギブアップか、②値段が高い時はレタスや白菜を買うことをギブアップもある訳です。

まぁ理想論としては、今の消費者目線に傾き過ぎたシーソーを生産者目線に少し傾けて、長期的な安定生産が可能な適正価格を守り、天候不順のロシアンルーレットに当たった時のために多様な産地・作物の生産現場を確保する、ということですかね。

 

ちなみに、世界もそうですが日本でも異常気象の頻度は増していて、ロシアンルーレットで頭をぶち抜いちゃう可能性は少しずつあがってきてます。具体的には以下のような異常気象です。*1

1)異常高温の出現頻度は増加 

2)異常低温の出現頻度は減少 

3)階級別日数(猛暑日真夏日、熱帯夜、冬日)には変化傾向

4)異常少雨大雨(日降水量 100mm、200mm)の年間回数が増加する傾向 ↗

5)最深積雪(東日本日本海側、西日本日本海側)に減少傾向 

 

なので、単一品種を大規模農地で効率的にやるっていう方法は、今のロシアンルーレットの確立が高まった時代にはリスク高だと思うのですが、まぁなんやかんやいうても大丈夫やろ、と漠然と思ってる人は私も含めて多いですね。

カジノのチップのイラスト

人間の活動規模が小さかった時代は、漁師が魚の資源量なんて考えることがバカバカしかったように、環境への悪影響を考えることも必要なかった訳ですが、いろんなテクノロジーが進んで活動規模が大きくなった今は、環境もインフラだという感覚が大事だと思ってます。まずその感覚をもたないと、ギャンブルに身を任せる時代が続くと思うので。なので、農業も環境への負荷を減らすような方向へと向かってはいます。

そのあたりの過去記事はこちらで。

mroneofthem.hatenablog.com

 という訳で、「ビットコインの次はレタス・大根・白菜の時代!」レポートでした。

*1:異常気象・極端現象の長期変化傾向

http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/climate_change/2014/pdf/2014_1-3.pdf

男子必見。農業男子は長生きできてお得という話

今週のお題は「体調管理」ということで、こんなニュースを紹介します。

agri.mynavi.jp


そう、なんと農作業が体にいいというデータがあるのです。

データの詳細を見るのはとりあえず置いておいて、確かに農村地帯ではじいちゃんばあちゃんが元気に農作業に精を出しているのをよく見かけるもの。元気だなぁというイメージがありますよね。

これは農業者が元気、というより、元気じゃないと農作業はやれないからなのかもしれませんが。体をガッツリこわした人が杖をつきながらヨタヨタ畑に出てくることは基本ないからです。


 更に更に、自分や家族が実際に食べる野菜を作るとなると、あまり農薬をかけたくないなと思うのが人情というもの。それに肥料を入れすぎると雑味が増す傾向があるので、施肥管理も販売用よりも結構きをつけたりするのが農家あるある。こだわって育てた野菜を新鮮な状態で食べていれば、当然健康にもいいでしょう。新鮮なものって、それだけでかなり美味しいというのは、意外と知られていないことであったりします。

    もっと言うと、農業の経験が蓄積すると食べ物の良し悪しが分かるようになって、スーパーマーケットで売っている極普通の野菜にストレスを感じるようになったりします。トマトとかキュウリとか特にです(甘くないし食感も悪く感じちゃうんです)。だからあまり買わないし、近所の人が作ってる野菜をもらったり、自給したりするようになって、尚更体にはいい訳ですよ。
 そうそう、運動面でも、畑をせっせとやっている人でぶよぶよした人はみたことがないです。外で全身を使って動いていれば、エクササイズなんぞやらなくても、十分すぎるほど運動がとれますからね。ただ腰への負担は気をつけないと、偉い目にあうことも事実です。
 そう考えると、あまり規模を大きくしないでも、家庭菜園的なスケールで家族分の野菜を育てるのが経営的プレッシャーも肉体的負担も少なくて良いような気もしますが、この記事では農業経営を意味する自営農業者の寿命が延びているとのこと。失敗してもまぁいいや、という環境下でやるのと、失敗したら家計に直結する、というプレッシャーの下でやるのとでは、作業への腰の入り方が違う、だからエクササイズ効果も違うといったことなのでしょうか。

検査着の男性のイラスト(健康診断)
 なんにせよ、これからの高齢化社会細々とでも農業やる人が増えると、健康になって保険料が減るし、美味しいものが食べれて幸福感は増すし、社会にとっては良いことだらけだと個人的には思うのですが、皆さんはどう感じるでしょうか。まぁ、そう考えてふらっとやってみて、農業がそんなに甘くない作業(だからこそいい運動になるのだけど)であることを痛感することも多い訳ですが。

 

***

早稲田大の堀口教授と弦間教授のアンケート調査概要

1)特に自営農業男子は農業やることによって平均寿命が伸びている感じ

男性:自営農業者の平均死亡年齢81.5歳、それ以外73.3歳
女性:自営農業者の平均死亡年齢84.1歳、それ以外82.5歳

 

2)仕事してる期間が長い方が健康寿命が長い感じ

男性:自営農業者の引退までの就労期間50.8年、それ以外37.5年
女性:自営農業者の引退までの就労期間49.1年、それ以外28.0年

 

3)引退年齢:農家はしぶとく仕事をする

男性:74.2歳、それ以外64.3歳
女性:72.8歳、それ以外60.8歳

 

4)自営農業者は引退したら即死んでくスタイル?

男性:自営農業者の引退後死亡までの期間7.4年、それ以外9.6歳
女性:自営農業者の引退後死亡までの期間11.0年、それ以外19.3歳


※ただこれらデータはあくまでも科学的論文に掲載されるような水準のものではなく、調査の範疇に入るものなのでお見知りおきを。

「ピンピンコロリ」農業者は長寿で元気 国内初「農業者の後期高齢者医療費は非農業者の7割」を証明 – 早稲田大学

スイス政府がロブスターを茹でることを禁じたので正義が分からなくなってきた話

アメリカの哲学者にジョン・ロールズという人がいて、1971年に『正義論』という本を書いています。

正義論

正義論

 

本のタイトルそのままに、「正義とは何か?そもそも正義とは存在し得るのか?」を考えた有名なお堅い本ですが、正義の基準として、想像力をベースにした次のような問いによってルールは作られるべきとも主張しています。

すなわち、

「俺がお前でも耐えられるのか?お前が俺でも耐えられるのか?」

という自問自答こそが基準になる、と―――

例えばロールズは広島・長崎への原爆投下を道徳的悪行と非難していますが、これはつまり、自分がもし日本人だったら耐えられない、という基準で悪と認定している訳です。対照的にアメリカでは原爆投下を未だに支持している人が多いですが、それは自分がもし日本人だったら、という想像力は湧いていない、ということだと言えます。当時は日本もアメリカを鬼畜米英と思っていたように、アメリカは日本を化け物のように捉えていましたからね。

 

さてさて、では農業について。

戦争という過酷な状況下のみならず、どんな時でも運営されている農業には、一見「正義」の概念はないように見えます。まったく意識していない人も多いでしょう。

しかし、外国(特に欧州)における農業の事例に触れると、農業における正義についても自然と意識するようになります。日本では馴染みがないですが、キリスト教の影響が強い欧州では「善く生きる」ことが人生のテーマとして深く根付いているからでしょう。農業においても、善い農業がテーマとして導入されています。

その最も分かりやすい例がアニマルウェルフェア

 アニマルウェルフェアの定義:快適性に配慮した家畜の飼養管理(畜産技術協会においては)

つまり昔の感覚だと、動物は下等で、人間が支配する所有物だから、どう扱ってもいいという感覚が強かったのでしょうが、最近では動物だって同じ生き物なのだからどう扱ってもいい訳じゃないだろ、という感覚が強くなってきている訳です。 

例を出すと、我々が大好きなケンタッキーフライドチキンは、ブロイラーと呼ばれる品種の鶏の肉ですが、その生産過程はとてもチキンに感情移入しているとは思えない、モノとして捉えるドライな工場の生産過程な訳です。

結論からすれば殺すんだから、最も商業的利益が出る形で扱おうぜ、という価値観。


DOCS: The Colonel's Chicken - Inside KFC The Billion Dollar Chicken Shop #1

 

それで、こういう事例に対し「かわいそうだな。」とか「いくらなんでもひどすぎるよ。」と感じる人が増え一定量に達すると、法規制などが出来て社会として方法を制限しよう(なんでもありではなくそうよ)ってことになります。

具体的には、ブロイラーに関しては2013年にOIE(国際獣疫事務局)でブロイラー生産システムの規約が出来ており、鶏の扱い方から飼料、飼育スペースなどかなり細かいルールが出来ました。

これは国際基準になっているので、日本の養鶏産業も対応せざるを得なくなっています。

(アニマルウェルフェアの考え方に対応したブロイラーの飼養管理指針(改訂版))

http://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/attach/pdf/animal_welfare-3.pdf

 

個人的な感覚をいいますと、

無宗教(クリスマスはやる神棚はある仏壇はある)の極普通の一般家庭に育ちケンタッキーもマクドナルドも好きな少年として育った私としては、思春期にある日突然正義感が目覚めて「こんなものは悪だ!」と思った訳ではないのですが、ケンタッキーの鶏の生育過程をドキュメンタリー等でみると、「うわっ・・・かわいそうだな」と思うくらいの人の心はあるものです。(あとフォアグラもプロセスもうわっと思いました。)

だから、社会としてはそういう規制があった方が優しい社会になっていいな、とはまぁ普通に思ってはいます。

 

ここでめでたしめでたし、でこの記事を終わりにしたいところですが、先日こんなニュースがあって「うーむ」と思ってしまいました。

www.cnn.co.jp

ロブスターの生きたままの熱湯ぶちこみ禁止!です。

要は、スイスの人はロブスターに感情移入しとる訳なのです。

ロールズの理屈でいえば、「俺がロブスターだったら耐えられない。生きたまま熱湯に入れられるなんて地獄だし、とてもじゃないが耐えられない」ということです。

ただこうなってくると、ロブスターに限らず、魚だって生き物だし、はたまた果物だって小麦だって生きてるんだから感情移入する人がいれば取り扱いに制限が必要になってくるんじゃないの?ということになりかねないとすら思ってきます。

一応、この新法のポイントはロブスターが高度な神経系を所有していて、生きたまま熱湯にぶちこんだら強い苦痛を感じている可能性があるということなので、科学的な基準がある訳なのですが。

人間は自分の肉体サイズに似た牛や馬にはじまり、鶏や海老や蟹にも感情移入していくもんなんですかね・・・

日本人からすると、行き過ぎな感じがするのですが、スイスの人はみんなそんなに慈悲深いんでしょうか。

大方の日本人からすると「それは過剰だろ」と思う人が多いでしょうが、ブロイラーの例でもあったように、国際的な基準になってくれば他人事という訳にもいきません。

いま、日本農業界はグローバルギャップなどの認証農作物を増やそうとバタバタしていますが、それは輸出に際して国際基準が足かせになってくるからです。

環境規制や食品安全規制など、ヨーロッパの動向をみながら日本農業のスタンスを決めていくことは、これからのグローバル社会に不可欠な態度ですね。という訳で、まずは毎日たべる白いお米一粒一粒に感情移入することからはじめましょうかね・・・。

2018年センター試験地理B 農業関連問題への勝手な解説とマメ情報

センター試験を終えた受験生のみなさん、お疲れ様でした。

久々に新聞に載っているセンター試験の問題をざっと見た所、今年の農業関連問題は4つでした。2015年は設問2で「世界の農業」というテーマでしたが、今年は「資源と産業」。農業事情に精通する泥まみれの農業男子女子の皆さんは残念でした。

 

さて、一応農業を専門にしている者として、農業問題について解説していこうというのが今回の企画。農学部進学を考えている人はチェックしてみてください。

 

では早速第一問。

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世界地図でロシア南西部あたりが黒く塗られており、そのエリアの土壌についての設問ですが、答えは④。

ウクライナから西シベリアまでに広がるFのエリアは土の王様とも言われるチェルノーゼムという肥沃な土壌帯。なんでも肥料を入れずしても驚異的な生産力があるそう。

とにかく土が良い、と言われています。

なぜそんなにも肥沃なのかというと、気候が特徴的だから。

ステップ気候に区分されるこのエリアでは、春先の融雪水と初夏の降雨で草本類が急速に生長、多量の有機物(枯れた植物とか動物遺体とか)が土壌に供給されます。しかし夏季の乾燥と冬季の凍結によって、土壌微生物の活動が一時的に中断されるため、有機物の分解が妨げられ土壌に多量の腐植が集積するのです。

ちなみに、日本の畑作の約50%を占める黒ボク土(火山灰土壌)は、一見みためは黒くて「コレキタ!土の王様キタ!」と思った人もいたそうですが、性質としては酸性でリン酸固定能力が高い(=一般にリン肥料の投入が不可欠)特徴があって、膝をついたという歴史があります。Orz

 

さて、続いて第二問。

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先ほどのチェルノーゼムはステップ気候ですが、実はアフリカのサヘルもステップ気候。かつては「緑の岸辺」と言われる程の植生がありましたが、近年はもっぱら干ばつ等による砂漠化が深刻化。同じステップ気候といっても状況は大きく違います。

土壌の肥沃度がチェルノーゼムとは対照的に低く、ちょっとした気候変動の影響で飢餓などが起こりやすい地域です。

一般には、不適切な管理をする農地(乾燥が進んで塩類集積が進むなど)の増加や、過放牧によって草本を家畜が食べてしまうことによって、砂漠化が起こると言われています。なので、誤っている記述は④。なので答えは④。

ただ、最近は砂漠の緑地化は実は動物がいなくなって物質循環が起きなくなったからでは?と考えた研究者のアラン・セイボリーが家畜を使った緑地化の実証に成功しており、定説が崩れる可能性があります。

こちらのビデオは面白いので一見の価値あり、です。

www.ted.com

 

さて、では次の問題。

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これは一番簡単だったのではないでしょうか?

なので解説はほどほどに答えは①。遺伝子組み換え作物の生産で一番有名なのはアメリカのモンサント社です。

企業側の目線だと遺伝子組み換え作物+除草剤などをセットで売って、農作物価格を下げ一度マーケットシェアをとってしまえば、他の競合生産者がつぶれるので、より経営的には盤石になる訳で、そういう戦略をとることが多いです。

アメリカは商業的農業の割合が高いですからね。

ただ最近は大手穀物メジャーの合併が増えていて、業界再編が起きているので、色々とパワーバランス等の状況は刻一刻と変わると思われます。最近の穀物メジャーの動向をかいた過去記事を貼っておきますので、気になる方はどうぞ。

mroneofthem.hatenablog.com

 

さぁ、それでは最後の問題。

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西アジアの問題がでましたね。なかなか難しかったのでは。

A地域はトルコで、意外と知られていませんがトルコは農業国でヘーゼルナッツやサクランボが世界一生産されている、という特徴があったりします。オリーブオイルの生産量も世界第二位。ということでこれは正しい記述。

B地域はサウジアラビアサウジアラビアのセンターピボットという地下水をくみ上げて作物を作る農業はとても有名です。センターピボットはコレ。(写真はサハラで獲られたものですが)

(引用:

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%94%E3%83%9C%E3%83%83%E3%83%88#/media/File:Irrigation_in_the_Heart_of_the_Sahara.jpg

砂漠の真ん中でも無理やり農業をやる訳です。すごいですよね~。

 

C地域はイランサフランやピスタチオが世界で生産量一位ですが、コーヒー生産はきいたことがないですね。あと、乾燥地域なのでため池も適当ではありません。よって記述は間違いなので正解は③。

D地域はアフガニスタンアフガニスタンのおっさんがヒツジの毛を駆ってる映像なんか見たことある人いるのでは?私は見たことありました。イスラム教的にもヒツジは重要で、羊飼いのおじさんがたくさんいます。なのでこれは正しい記述。

 

さてさて、全体を総括すると、よく読めば分かる問題もある気がしますが、焦っていると難しく感じるでしょうね。

あとは基本的な知識量がどれだけあるか。地理がまったく好きじゃない人は結構しんどいかもしれません。

あと、私自身がそうでしたが、世界を色々旅してから地理や世界史を勉強した方が断然身になりますね。高校時代だとイメージを掴むことが難しいでしょう。

と、そんなこんなで、センター試験地理の勝手な解説でした。