時代はスマ農?今年はじまる新事業
本日12:00。ここ数か月の間、雨の日も風の日も(屋内仕事なのでまるで関係ないけれど(^-^;))かなりのリソースを割いて取り組んできた『スマート農業加速化実証プロジェクト』の申請がようやく完了した。お上から「ちょっとここに書いてくれないか?」というトップダウン型の補助事業ではなく、「コレってどういう事業だ?」「どんな連携を組む必要があるんだ?」と0から1を手探りで作り上げるような、ボトムアップ型のチャレンジだったので、申請した側としてはなかなか感慨深いものがある。今回は申請が無事に完了した記念に、このプロジェクトにまつわる雑記を書いてみたい。
↓農研機構のスマート農業加速化実証プロジェクトのページ
申請者達が「スマ農」と呼ぶそのプロジェクトとは・・・
さて、そもそも『スマート農業加速化実証プロジェクト』だが、なんてことはない、昨今はやりのスマート農業機械を生産現場に導入して、生産効率やら経済性やらを解決しようぜ、というプロジェクトだ。スマート農業の効果を試そう、という取り組みや研究プロジェクトは何も真新しいものではなく、大学や研究機関(北海道とかの生産現場でも)では地道にやっているものなのだが、今回のプロジェクトではそういう「研究業界での地道なデータとり」をやってると、実践編がいつになるのか分からん!的な焦りが垣間見えて(農水の担当者も説明会で「論文より現場重視」という発言をしていた)、最初っから有望な生産現場に導入して、実践してゆく中でデータをとっていこうぜ、という実践面に重点が置かれている所に特徴がある。
てな訳で、「研究プロジェクトなんだけど超現場寄り」「現場寄りなんだけど研究もちゃんとしてね。」という微妙な領域のプロジェクトなのが『スマート農業実証加速化プロジェクト』ってヤツの正体な訳です。”加速化”ってのが、まぁ暗に「これまでのって研究のために研究してたんじゃねぇか?」と暗にディスっている訳です。
遂に農家が日の目をみる?
「現場に役立つ研究を」という意味では、3Kとののしられ、薄給と敬遠され、風評被害が起きれば問答無用であっという間に孤独になってしまう我々生産者にも光が当たり始めたと捉えてもいい訳だが、実際問題「スマート農業」が果たして現場の問題を解決するのか、という点ではまだまだ疑問がある。
というのも、スマート農業というのはとにかく高いのだ。
自動運転のトラクターなんて1500万なんてザラだし、ドローンだって200万、300万は当たり前。
ロボットトラクター>>>https://response.jp/article/2018/06/27/311297.html
ドローン>>>https://viva-drone.com/drone-for-agriculture-2018/
WATARASという自動水管理装置だって、1枚の田んぼに設置するのに1機20万くらいするし、水位や水温のデータをモバイル通信でとばす基地局つくるのに+30万くらいするんだよね。
WATARAS>>>http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nire/076704.html
(↓WATARAS関連の過去記事)
つまり、1箇所に集まっている10枚の田んぼを管理するだけで、230万以上はする訳だ。(入水口のタイプにもよるけどね。バルブ式だともっとお安くなる。)
それだけのコストをかけてペイする農家が今この日本にどれだけいるか?
というのが、スマート農業を突き付けられているおおかたの農家の本音といえば本音なのである。
スマート農業を導入してもペイできる生産地とは
そう、通常はお高くてとても導入できないスマート農業。しかし今回の『スマート農業加速化実証プロジェクト』では、プロジェクト予算でその機械経費をみてくれる、という訳で、「なに!?タダ!?」という熱い視線が全国から集まっている訳なのである。
ワタクシも二度東京での説明会に出たのだが、会場は超満員ですごい盛況。冬なのに熱い、というヤツ。
といっても、「スマート農業を入れたらウチはめっちゃ楽になるんです!」と陳情した所で100%採択されるはずがない。農水省はなにも一つ一つの農家に肩入れしたい訳ではなく、最近は特に、自立できる農家をサポートしようという風にシフトしている。
まぁ、つまり昔は農家全体をサポートできたけど、今・これからはそんなに広くサポート出来なくなった、という話なのだが。。。
つまり今回のプロジェクトでいうと、農水省の考えは、まずA生産地でスマート農業を導入した体系を実践し、データも細かくとってみて、上手くいく生産体系ならB、C、Dの産地でもそのデータを参考に横展開してくれよって話なのだ。
で、経営的にペイする、となると、①生産効率がめちゃくちゃいいか、②単価がめちゃくちゃいいか、っていう二つの方向性に絞られていくしかないんじゃないかなと個人的には思っていて、米でいうと北海道みたいな大規模化が容易な所は対象に選ばれるだろうし、生産効率は限界あるけど単価をあげられる米(いわゆる高付加価値米というヤツ)を作ってる所も選ばれる可能性が高い、だろうとは一般的に予想できる。
まぁ、中途半端が一番よくない、という話でありまして。。。
とはいえ主役は研究者
このプロジェクト、生産現場を重視しよう、とはいいつつ、実際にプロジェクトを動かしていくのは研究者である。
まぁそれもそのはずで、シーズンが始まれば生産者は余裕がないし、こまめにデータとったり、分析したりするのは、やっぱり研究者なのだ。
申請書の形式も、バッチリ研究費申請の形だし、経験がない人がやれるものではないことが明らかだった。ワタクシごとだが、そういう意味では、学生時代に何度も研究費申請にトライして一度は獲得したことがあったり(学振は何度も落ち、笹川研究助成は採択された)、研究職についたことがある経験が今回おおいに役に立った。
ちなみにワタクシらの案は、生産効率には限界あるけど単価が高いコメを作りましょうね方向の案で、大学や研究機関も巻き込んだ形になっている。申請書の構造としてはポイントが高いと思うのだが、今回は準備時間が少ないこともあって、研究的な側面できびしーく評価されるとマイナスもついてしまうかもしれない。
まぁ、もう申請自体は終わったので、あとは3月中旬の良い結果を待つしかないのだが。。。